基礎からのGVP【第4回】

はじめに
医薬品は、低分子化合物であれ、バイオ物質であれ、生体にとってみればあくまでも異物であり、異種タンパク等であるため、生体に取り込まれると、様々な反応が生じるのは当然である。これらの反応を如何に利用し、薬物としていくかが、医学・薬学の知恵である。ある病態を治療するうえで、都合のいい反応を「効果」といい、都合の悪い反応を古来より「副作用」と呼び、様々な工夫で「くすり」として利用されてきた。

1. 概要
近年、種々な化合物等が急速に薬物として利用されるようになってきたが、その着眼点は都合のいい反応、すなわち「効果」の面に中心をおき、この情報を頼りに医療上利用してきた経緯がある。そのため、様々な医薬品の不都合な反応による不幸な症例が、多々生じる結果となってきた。これらの症例が繰り返し発生してしまう要因は、発現した症状は病態の一連の変化として捉えてしまっていた、利用した医薬品の不都合な反応によるものと判明していなかった、長期投与時にのみみられる不都合な反応とは全く気がつかなかったなど、様々考えられるが、問題点は一点に集約できる。それは、臨床現場で発生した何らかの病状の変化が適切に評価されず、現場に埋没させてしまったことである。
そして、この変化に関する情報を埋没させないための方策を検討してきたというのが医学・薬学の知恵である。
•    化学的、製剤的な工夫を行い必要な作用を引出し、その他の作用をできるだけ抑える。
•    動物実験等により様々な作用の存在を確認する。
•    臨床試験等により必要な作用を一番効率よく発揮させる使用法を確認する。
•    非臨床・臨床試験等により重篤な副作用の発生を防ぐ使用方法を確認する。
など、医薬品の承認前における情報収集法を工夫し可能な限り多くの情報のもと、臨床の場に提供されることになるが、それでも実際の場では、併用される医薬品の存在、合併症の存在、多様な患者個々の特性等のもとでの使用であることから、予測し得なかった様々な不都合な反応が出現し重篤な転帰に至る症例が発生する。このために、このような被害の発生、拡大につながらないよう情報を共有し、的確に評価し、適切な措置を講ずる体制を、製造販売業者、医薬関係者、行政当局の連携により構築している。この体制を副作用・感染症報告制度という。
2. 種々の報告制度
医薬品の副作用等安全性情報の収集・報告システムとしては、製薬企業が行う副作用等報告制度(企業報告制度)、医薬関係者による医薬品等安全性情報報告制度(直接報告制度)、患者からの副作用報告制度(患者報告制度)、諸外国との安全性情報交換を行うWHO国際医薬品モニタリング制度がある。これらの制度は、安全性情報に関する収集・共有化を図るものであり、各企業における情報の精査、行政における情報データベースの共有・提供、グローバルレベルでの情報監測が可能となっている。
以下に、企業報告制度を中心に副作用・感染症報告制度の概略につき解説する。

(1)企業報告制度(企業による副作用・感染症報告制度 )
薬機法にて製造販売業者に課せられた副作用・感染症報告義務制度であり、医薬品医療機器総合機構(以下、PMDA)が厚生労働省と連携し報告を受理・管理している。HIV汚染の非加熱血液製剤使用によるエイズ感染症発生等の問題を踏まえ、従来不明確であった副作用報告の法的根拠を明確にさせるため1997年4月施行の法改正において「副作用報告」の条項が創設され、その中で報告対象に「当該品目の使用によるものと疑われる感染症の発生」が追加明文化された。また、同時に施行された施行規則の改正において、ICHの合意事項を踏まえ、報告対象となる「重篤な症例」の範囲が明確化された。並びに、安全性問題を理由としてとられた外国での製造・販売の中止措置等の規制情報についても報告対象とすることとなった。

 
図-1 施行規則:次に揚げる症例⇒重篤な症例

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