ラボにおけるERESとCSV【第122回】
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FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(92)
7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
■ XXXX社 2023/9/8
施設:製剤工場(受託)
■ Observation 2
OOSの結果に対しQCが実施した調査は科学的でなく根本原因を解明していない。
例えば、
A) 2021/2/12の分析試験においてOOSが発生したが、OOS調査においてラボエラーか製造エラーかを判別できなかった。2021/3/3に、別個に調整した3つのサンプルに対し再テストを2回ずつ実施、つまり合計6つのサンプルに対し再テストを実施した。再テストの結果6サンプルのうち3サンプルがOOSとなった。このOOSの根本原因を調査しようとせずに2021/4/6に再テストを実施し合格の結果を得た。この合格結果により初回のOOSを棄却し製品は出荷された。2021/4/6に新たなサンプルにより再テストすることの正当性はOOS調査計画に記載されていなかった。製造後すぐにテストすると分析結果が高くなってしまうことがときどきあるので、再テストを実施したとの貴社説明があった。これらの結果により、製造完了後ある時間が経過してからテストをするようOOS調査において推奨がなされている。しかし、OOSの根本原因は明らかにされておらず、他のバッチにおける影響も分かっておらず、是正も行われていない。同様のOOSが2021年、2022年、2023年にかけて発生しており、製造完了後すぐにテストしたことをOOSの理由としている。
OOS発生日の例:
OOS発生日の例:
2021/2/22
2021/9/10
2021/10/26
2021/12/7
2021/9/10
2021/10/26
2021/12/7
★解説:Observation 2 A)
OOS(Out Of Specification:規格外)となった場合の処理は下記ガイダンスが参考になる。
OOS(Out Of Specification:規格外)となった場合の処理は下記ガイダンスが参考になる。
・ FDAのOOS調査ガイダンス
Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production Guidance for Industry, 2022/5
Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production Guidance for Industry, 2022/5
このガイダンスにおけるOOS調査手順の概要を以下に紹介する。
1)PHASE I: ラボ調査
・ ラボデータの正確性の初期評価を行う
・ 可能な限りサンプル調製を廃棄する前に初期評価を実施する
・ 初回のサンプル調製を初期評価に使うことにより、ラボエラーであったのか機器の誤動作であったのかを見極めることができる
・ OOSの原因が試験工程において確認されなかった場合、フルスケールのOOS調査(PHASE II)へ進む
・ 受託ラボの場合、データや調査結果などを委託元の品質部門へ連絡する
2)PHASE II: フルスケールOOS 調査
・ 製造工程のレビューを行う
・ 調査は品質部門が実施し、製造、プロセス開発、メンテナンス、エンジニアリングなど、関係する可能性のある他のすべての部門を関与させる
本OOSの処理に対する感想
A) 「2021/3/3に別個に調整した3つのサンプルに対し再テストを2回ずつ実施、つまり合計6つのサンプルに対し再テストを実施したが、6サンプルのうち3サンプルがOOSとなった」とのことである。また2021年に何回もOOSが発生している。手技に起因するラボエラーではないように感じる。OOS原因として以下のように様々なものがあるのではなかろうか。
・ 不安定な分析装置
・ 不安定な分析法
・ 不安定な試薬
・ 製品が本質的に不安定
・ 不安定な原材料
・ 洗浄等において不安定な物質が混入
・ 不安定な分析法
・ 不安定な試薬
・ 製品が本質的に不安定
・ 不安定な原材料
・ 洗浄等において不安定な物質が混入
B) 本指摘を受けたのは受託製剤工場である。上記FDAガイダンスに記載されているように、OOSの原因が試験工程において確認できなかった時点で製造委託元に連絡をとり、製造委託元の品質部門、製剤開発や分析法開発を行ったCMC部門などを交えて広範囲に原因調査をするのがよいのではなかろうか。
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