基礎からのGVP【第16回】
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医薬品リスク管理計画(I)
はじめに
承認申請に対し、様々な施策により早期承認を進め、少しでも早く医療現場に新医薬品を提供できるようにする一方で、日常診療における安全性確保を如何に図るかが、課題となった。このため、集積された情報をもとに問題点の検出とその検証並びにその発生を予防・抑制するための方策を系統化し、如何に実践化していくかを、医薬品リスク管理計画として作成し、公開を前提とし、医療関係者・製薬企業・行政当局が共有し、適正使用に基づいた安全確保を図ることとなった。
1.概要
医薬品のリスクを開発時の情報を踏まえ、開発時までに判明している問題点(重要な特定されたリスク)、類薬や海外での使用状況から予測しえる問題点(重要な潜在的リスク)や不足している情報(不足情報)等を明確に「安全性検討事項」としてまとめる。次いで、製造販売後の使用実態のもとで、重篤な副作用の発現や、未知の副作用の発現等のリスクを継続して把握するための「安全性監視計画」として実施すべき通常の活動、そして集積情報に応じ確認・充足するための追加すべき適切な調査・試験等の活動との組合せとして、総合的に且つ効率的に計画する必要がある。そして、リスクを如何にして軽減するかの方策についても、適正使用推進として実施すべき通常の、そして同様に追加すべきリスク最小方法を「リスク最小化計画」としてまとめる必要がある。これらの計画は、承認申請時には医療現場での負担も考慮し、バランスの取れた医薬品リスク管理計画として立案され、申請資料として提出しなければならない。そして、承認審査の段階で詳細に検討され、遅くとも製造販売開始時点で明確なリスク管理計画として公表されなければならない。
2.医薬品のリスク管理計画の概要
平成25年3月までは、安全確保のために申請時の関連資料を精査し、調査等基本計画概略案を検討してきたが、被験者の安全性確保の観点や試験結果の評価を明確にするために選択された集団のみを対象とした試験等からの情報であることから、自ずと限界があることを前提に、医薬品リスク管理計画書を立案するうえでは、以下の例のような手順で情報を整理することとなった。
(1)安全性検討事項
医薬品のベネフィット・リスクバランスに影響を及ぼす可能性のあるリスクについて、重要な関連性が明らか,又は疑われる副作用や不足情報として以下の要因に応じ分類・要約する。
1) 重要な特定されたリスク
重篤又は高頻度で起こるものであって、医薬品との関連性が確認されている以下に示すもの(相互作用を含む)
・非臨床試験において十分に証明されており、臨床データにおいても立証されている副作用
・臨床試験等で、因果関係が示唆された副作用
・副作用報告から因果関係が強く示唆された副作用
2)重要な潜在的リスク
関連性は疑わしいが確認が十分でないなどで、安全性の懸念があるために更なる情報収集が必要なもの(相互作用を含む)
・臨床試験等やその他の臨床使用で発現した重篤又は高頻度で因果関係が不明な有害事象
・臨床試験等やその他の臨床使用で発現した有害事象で重篤度が高まる可能性のあるもの
・非臨床試験では認められるが、臨床試験等では認められていない有害事象
・薬理作用から予測されるが、臨床試験等では認められていない有害事象
・同種同効薬では認められているが、本剤では認められていない有害事象
・集積された因果関係不明の副作用報告
3) 重要な不足情報
申請時には得られていない情報であって、製造販売後の安全性を予測する上で限界があることを示している情報で、例えば臨床試験から除外されている患者集団のうち、臨床現場での使用頻度が高い等、安全性の検討の必要性が高い患者集団などにおいて必要となる安全性等の情報
・小児、高齢者等での使用情報
・慎重投与等の合併症を有する患者群での使用情報
・その他特別な集団での使用情報
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