再生医療等製品の品質保証についての雑感【第90回】
第90回:細胞製造の品質マネジメントシステム (20)
~ 【閑話】「品質」とQMSとPQS (1) ~
はじめに
医薬品や再生医療等製品の製造システム構築には、品質マネジメントシステムが不可欠です。品質マネジメントシステムと言えば、ISO 9001のQMS(Quality Management System)が一般的だと考えますが、医薬品製造では、ISOとは別に、ICH-Q10の医薬品品質システム(PQS)が引用されます。両者は、その概念は同じですが、QMSは目的と目標が多様であり、必ずしも一致しないと認識します。今回は、閑話として、QMSとPQSの解釈について雑感を述べます。
● ISO 9001のQMSは「品質」のマネジメントシステムではない
そもそもQMSのQualityは、直訳すると、「質」であって、「品質」ではありません。QMSとは「質マネジメントシステム」であって、「○○の質」という個別の目標では示されていません。QMSの目的は、顧客満足が得られる質のマネジメントであり、製品のような物質に限らず、例えばそれを用いたサービスなど、無形のものの質も対象となります。上位概念となる提供サービスなどを含む質のマネジメントは、製造のみのマネジメントとは大きく異なる部分が生じます。総合的な「質マネジメント」では、対象範囲が製造のみに限定されず、その目標が構成する階層により、「品質」の安定よりも顧客満足(上位目標)を重要視する設計も許容します。例えば、サービスを受ける顧客が多様であれば、多くの人が受け入れる結果を得るために、下位プロセスの結果でバラツキを認めることが許容されます。このような考え方は、GMPの三原則(特に、品質低下を防ぐ)と相容れないと感じる部分があります。
ISO 9001は、1994年版までは、「品質」マネジメントの意向が強かったですが、2000年版の頃より顧客満足の実現に対するプロセス設計や品質管理のフレキシビリティが向上しました。そのため、QMSが元来有する、製品の品質維持よりも顧客満足を優先した継続的改善などを含め、医薬品製造分野での引用が複雑になりました。実際に医療機器では、ISO 9001をベースとしてISO 13485:2003が作成されましたが、非常に強い制限が加えられました(文章化やトレサビリティなど)。そのため、医薬品製造システムの根本は品質マネジメントシステムですが、医薬品製造分野では、2000年頃以降にはあまり積極的にISO 9001を引用しなくなったと感じました。
● ISO 9001を引用しなくなった影響を勝手に推理すると..
対して、PQSは、Pharmaceutical Quality Systemであり、「医薬品の質」と明言しているので、間違いなく「品質」マネジメントです。その考え方は、原初のISO 9001、すなわち品質マネジメントの8原則(現在は7原則)に準じた、「製品品質」を最上位としたマネジメントシステム構築の考え方です。QMSでも、目標の階層に制限を設ければ、ほぼ同じものと考えますが、「医薬品の質」と目標を明確にしているので扱いやすいと考えます。
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