ドマさんの徒然なるままに【第92話】 BMP症例・後編

第92話:BMP症例・後編

後編のはじめに
前編に続いて、2021年に発出された改正GMP省令*1(現行版です)をベースに、「こんなことしちゃダメだよ!」、「こんなんじゃダメだよ!」といった事項を改正GMP省令の条項順に列挙しました。本後編では、第11条の3 製品品質の照査から第20条 文書及び記録の管理までを示します。

前編でも述べましたが、中には条項のポイントを逆論法での解釈として1~2行で示しているものもあります。ご自身のGMP省令各条項についての理解度を再確認してみてください。出来れば、GMP省令を横に置いて(別タブを開いておいて)、ひとつずつ確認しながらお読みいただければ、かなり勉強になると思って書いています。

なお、⇒●● として記した水色コメントは、筆者の勝手な言い分です。悪しからず。


第11条の3 製品品質の照査
「うちはチャンと製品品質照査をやってるよ」と言いつつ、「製品品質照査の実態と実効性なんて評価したこと無い」と言う、あなた、それが問題だと気づいています? 何のためにやっているか、そしその結果を踏まえてどうするかが大事なんですけど。
⇒自組織の品質保証に有効活用しうる製品品質照査を実施している会社(製造所)がどれだけあるか疑問だと言ったら叱られますかね。実施することと実効性を求めることとは違うレベルと思います。実効性を評価、分析するならば、当然改善に繋がりますよね。
 
第11条の4 原料等の供給者の管理 
「こんなこと、言われなくてもやってるわ!」と言い返して貰いたいですが、お宅はどうですか?
⇒セミナー講師を務めていると「どこまでやるべきか?」といった質問を受けることが多いのです。特に治験薬関係ではやたら多い。「そんなことも自分で決められないのか!」と言ったら失礼ですかね。当該品目についての品質リスクとその原材料の供給リスクを考えれば答えは出て来ると思いますけど。
 
第11条の5 外部委託業者の管理
前条項と同じです。ましてや製造and/or試験検査の委託先であり、原材料のレベルではありません。ちょっとは自分で考えたら? GMPでもGQPでも「言われたからやる」は「要件だからやる」と同じことでは? GxPの基本は「自分で考えて実行する」なんじゃないですかね。
⇒2005年4月の当時の薬事法の大改正もあって、GMP省令のみならずGQP省令も発効した。当時、日薬連・品質委員会の常任委員であったが、GQP省令の中にある「確認すること」は「監査することを意味するのか? 実地である必要はあるのか?」といったことが議論に挙がったことがある。GMP/GQPの専門家であるはずの会社代表の委員から、そんな質問が出て来ること自体に疑問を感じた。あれから21年が経過した。現在そんなことを言い出す者はいないと思うが、もしそんな感覚の会社があるとすれば、大問題のように思う。
 
第12条 製造所からの出荷の管理
「チェックリストに基づいてやっています」と言うお宅、悪い言い方をご容赦いただければ、「製造記録に問題は無いか?」とか「試験検査記録に問題は無いか?」といったワンパターンの手順に陥っていませんか? チェックの流れは品目やロットに関わりませんが、当該記録は品目だけでなくロットごとに違っている(許容範囲内であっても数値は異なる。ましてや逸脱発生等は?)という事実を見逃さないようなレビューをしていますか? 思いの外、気づかないうちに惰性で実施していたりするものです。
⇒品質保証部門(QA)の最たる業務です。それを十分に認識して業務を担ってほしいと願います。自己点検では、自己点検自体をQAが実施することになるため、出荷業務については甘くなったり、曖昧になったりし易いということも意識しておきましょう。
 
第13条 バリデーション
「うちはGMP省令とバリデーション指針に則りバリデーションをやっています」と偉そうに言う、あなた。正直言って、GMP省令の本条項の記述はラフすぎますよ。別途GMP省令の解説通知*2として発出された「バリデーション指針」も、もろ一般論の概説にすぎず、現実のバリデーション作業にはあまり役に立つとは思えません。他のGMPやガイドライン等を参考にしていますか?
⇒バリデーション、特にプロセスバリデーション(PV)については、経験者でないと結構厄介な作業と言えます。少なくともAnnex 15を含むEU-GMP(PIC/S GMP)は勿論のこと、PVについては、米国FDAのPVガイダンス*3およびEMAのPVガイドライン*4を参考にしたほうが賢明と言えます。
さらに、分析法バリデーションについては、「第11条の2 安定性モニタリング」とともに、ICH Q2(R2)(分析法バリデーション)/Q14(分析法の開発)を参考*5にすることを強くお勧めします。

 
第14条 変更の管理
「うちは製造販売業者との連携はシッカリしてるので大丈夫」と言い切っている、あなた。マジ大丈夫ですか? Quality Agreementをキチンと締結し、両者間での丁寧かつ具体的な変更連絡の仕方が記されていますか? 変更提案は、製造販売業者からとは限らず、製造業者からの場合もありますからね。少なくとも変更については、「計画」からスタートするはずですから、「変更したい」「変更しよう」と思った時点(要は、相手の承諾を得たい段階)から相当早く連絡できますよね?
⇒変更管理については、承認書記載事項との齟齬や乖離という観点で、より一層の注意が求められることになったと言えますが、未だに製造販売業者と製造業者との間の連携が問われています。自社工場での製造が減少したこともあると思いますが、個人的には疑問でしかありません。
ちなみに、テクニカルな部分については適切な技術移管が必要になりますが、最終的な(正式な)文書による移管はともかくとして、「変更するよ(開始段階)」「ここまでやりました(途中経過)」といった情報連絡については、メールといったことで一昔前よりははるかに簡便になったように思うのですが・・・。

 
第15条 逸脱の管理
よほどとんでもない製造所でなければ、さすがに逸脱は管理しているはずと思いきや、その逸脱の定義がかなり甘い製造所もあるんですよねー。また受託製造業者の場合、必ずしもキチンと製造販売業者に報告していないケースもあるんですよねー。時に、お互いの連絡の効率化のために逸脱をクラス分けして連絡の必要性を分類している会社さんがあるようですが、そのクラス分類の根拠は何なんですか? ①どのタイミングで、②何を根拠に、③誰が、そのクラスを分類するんですかね? 一見すると迅速かつ効率的な連絡・報告ができるように見えますが、それって事務的処理についてであって、実際の品質に対する影響度合いや範囲は発生原因が特定・把握できていないと、もろ形式処理にすぎないように思えます。
⇒逸脱の根本原因(Root Cause Analysis)や再発防止(CAPA)も含めての対応となれば時間もかかるし、受託者と委託者の解釈相違も生じるんじゃないでしょうかね。前条と同様、お宅たち、どういうQuality Agreementを締結してるの? まずは第一報としての発生事実の連絡、ついで途中経過報告、そして最後に今後どうするかの相談(確認)なんじゃないですかね。皮肉込みで言わせて貰えば、お互いにたった1回の連絡書や報告書で済まそうなんて思っていませんか?
ちなみに、「第11条 品質管理の八項」にOOSに関する項目が追加されましたが、OOSも捉え方次第では逸脱ですからね。特にOOSの原因をラボエラーとしている場合、状況次第ではヒューマンエラーといった手順からの逸脱の可能性もありますよ。
えっ! うちは、毎日数件の逸脱が発生するので、それだけでてんやわんや、だってか? それって、SOPどおりの作業も教育訓練も何もダメダメってことなんじゃないですかね。

 
第16条 品質情報及び品質不良等の処理
基本的には「苦情処理」ですが、事象の第一報は営業部門からですよね。では、その営業部門と製造販売業者のCorporate QA、そこから(委託先を含む)Site QAへの連絡体制と手順はどうなっていますか? マジ大丈夫?
⇒問題はSOPの有無じゃなく、実際の対応の迅速性と適切性にかかっていますからね、お忘れなく。
 
第17条 回収等の処理
基本は前条と同じ。ただ、より問題が深刻だということです。まして市場に出回ってしまっていれば、物流倉庫を含む卸売販売業者、病院、薬局といった状態になりますからね。「SOPはあるけど、連絡手順はSOPを見ながらでないと出来ない」ってか。完全にアウトでしょ。
⇒SOPはあるが、現実対応が迅速かつ適切に行えないのでは意味が無いですよ。経験が少ない企業さん、それはそれで素晴らしいことではありますが、逆に考えれば、経験が少ない分、イザという場合の現実対応が出来ない可能性が高いとも言えます。そんなイザという場合に備え、モック回収を活用して貰いたいものです。うちは経験数だけは自慢できるって? 違う意味でアウトでしょ。
 
第18条 自己点検 
「要件だからやっていますよ!」って? 申し訳ありませんが、アウトですよ。やるからには、その目的を明確に示し、組織全体として一致してその目的を達成しましょうね。
⇒目的は簡単なのです。第一に不備・不足を見つけて改善を図ること。第二・第三としては、会社さんによって順番は変わるでしょうが、第二に外部委託先や原材料供給先の監査における監査員の養成。第三に査察・監査を受ける練習です。
 
第19条 教育訓練
教育訓練のほとんどが座学によるセミナー形式ですか? その確認は(二者・三者といった)択一制の選択テストですか? 実効性は何をもってチェックされていますか?
⇒「教育訓練の実効性を定期的に評価し、必要に応じて改善を図る」という記述は追加されましたが、本条の書きぶり、どう見ても座学を匂わせており、トレーニング(訓練)のニュアンスはあまり感じられないんですよね。もし技術的なことであれば、「必要に応じて改善を図る」のではなく、その場で失格なんじゃないですかね。
さらに悪い言い方をすれば、受講者の資質については何も触れられていないような・・・。経験的に言わせていただければ、GMPの“知識”よりも、職員の“資質”のほうが実際の作業には影響が大きいと思っています。少なくとも、QA担当者については資質が物を言います。

 
第20条 文書及び記録の管理
実際の具体的な保管管理についてはどうなさっていますか? 誰が、どのように、どこに、といった具体的な手順です。
⇒マスター文書(原本)と記録についての保管の重要性は理解されているように思います。が、その管理方法については甘いと感じさせる製造所があるように思えます。施錠のための鍵の管理、保管庫の耐火性といったことです。デジタルであればアーカイブ用のメインサーバーは勿論のことハードディスクやDVD等の管理も含まれます。
具体的には、物理的に支障が無い保管庫に、セキュリティ(持ち出し等)についての記録を準備するといったことですが、その文書や記録自体のインテグリティは要件とされたことで注意しても、その管理の実態がいい加減であれば、元も子もないということになります。あくまでData Integrityは問題なくやっているということが前提とはなりますが・・・。

 

全体のおわりに
前編のおわりに、として正直に書きましたが、本話のタイトルの「BMP症例」は、GMP省令の洒落であり、BMPは“Bad Manufacturing Practices”の略です。この“M”の部分は、作業のマナーが悪いと言うことでの“Bad Manner Practices”、作業員の心構えが悪いということでの“Bad Mind Practices”、さらに作業員はマトモなのに管理者といった上位者が同調圧力をかけ作業員の心を蝕む“Bad Mental (Mentum) Practices”とかでもあります。どの場合でどう解釈したとしても、すべてに通じるのは“ビョーキ”ということでしょうか。「こんなことしちゃダメだよ!」、「こんなんじゃダメだよ!」という、まさに「BMP症例」です。少なくとも、このビョーキ、感染症ではない希少病であることを祈ります。


では、また。See you next time on the WEB.



【徒然後記】
六月病
六月病なる新たな病気(?)が発生してるらしい。正式な医学用語ではないが、六月に入ってから感じる心身の不調を来たす症状とのことである。新年度が始まり2~3ヵ月が経過し、新しい環境に適応できたにも関わらず、疲れやストレスが蓄積して体調を崩しやすくなる時期に現れる症状なので六月病と称されるようだ。
新生活や新しい環境に適応できずにストレスが蓄積し、ゴールデンウィーク明け頃に心身の不調が出る、従来から言われていた五月病とは別物とのことである。五月病は「適応障害」の一種とされることが多いが、六月病は慢性的なストレスが引き金となることが多く、うつ症状へと移行するリスクもあるとのことである。気を付けよう。

(天の声)お前は「サンデー毎日(毎日お休みの意味)」だから、無関係じゃろ。
(筆者)   これでもほぼ毎日仕事してるわ!
(天の声)ほっほっー、「ほぼ」ってどういうことじゃ?
(筆者)   プライベートな話だし、大きなお世話だよ。
(天の声)やっぱし、マトモに仕事なんてしてないな? 五月病にも六月病にも無縁で、良かったねー。でも、本話に出て来る症例って、慢性BMP症に罹患しておるお前のことじゃろ。
(筆者)   くっそー!

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*1:令和3年(2021年)4月28日付厚生労働省令第90号「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部を改正する省令」」 
https://laws.e-gov.go.jp/law/416M60000100179

*2:令和3年(2021年)4月28日付薬生監麻発 0428 第 2 号「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部改正について」https://www.pmda.go.jp/files/000264441.pdf

*3:2011年1月「Process Validation: General Principles and Practices (Revision 1)」
https://www.fda.gov/media/71021/download

*4:2016年11月「Guideline on process validation for finished products - information and data to be provided in regulatory submission (Rev1,Corr.1)」
https://www.ema.europa.eu/en/documents/scientific-guideline/guideline-process-validation-finished-products-information-and-data-be-provided-regulatory-submissions-revision-1_en.pdf

*5:PMDAの関連ICHウェブサイト
「ICH-Q2 分析法バリデーション」
https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0042.html
「ICH-Q14 分析法の開発」
https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0098.html

 

 

 

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