滅菌バリデーションの工数をどう減らすか ― 改正GMP省令・Annex 1時代の温度測定とワイヤレスロガー活用
記事投稿:株式会社ライブズ・インターナショナル・ジャパン 【PR記事】 (2026.10.XX更新)
滅菌バリデーションは無菌医薬品の品質を支える根幹の業務である。一方で、実施している間はオートクレーブなどの生産設備が止まり、準備からレポート作成までに担当者の時間も大きく割かれる。改正GMP省令の施行やPIC/S GMP Annex 1の改訂で規制の要求水準は高まっているが、現場の人員と時間は限られたままだ。
本稿では、滅菌バリデーションのどの工程に時間がかかっているのかを整理し、温度測定に関する国内外の規制要求を確認したうえで、要求を満たしながら工数を減らすための考え方と、その手段としてのリアルタイムワイヤレス温度ロガーを紹介する。

オートクレーブの温度バリデーションの様子(提供:ライブズ・インターナショナル・ジャパン)
1. 滅菌バリデーションが生産のボトルネックになっている
■ 無菌性保証の要であり、設備が止まる業務でもある
滅菌バリデーションとは、製造所の滅菌に係る構造設備や手順、工程が無菌性を保証することを検証し、それを文書化することで、製品の無菌性を恒常的に保証できるようにする取り組みである。高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)であれば、校正済みの温度センサーを缶内に配置し、所定の滅菌温度が缶内のどの位置でも達成されていることを確認する。
ただし、バリデーションを実施している間、その設備は生産に使えない。滅菌バリデーションは品質保証に欠かせない一方で、生産設備のダウンタイムを生む業務でもある。
■ 現場で起きていること
注射剤やバイオ医薬品、再生医療等製品の拡大に伴い、無菌製造に関わる設備と、それに伴うバリデーションの件数は増えている。製造現場からは、次のような声が聞かれる。
• 生産スケジュールがタイトで、温度バリデーションの日程を確保できない
• バリデーションが立て込み、測定機器の取り合いになる
• 有線の測定システムを使いこなせる担当者が限られている
• 測定後のレポート作成に追われ、本来の業務に集中できない
■ 時間を食うのは「測定の前後」
熱電対を用いた一般的な滅菌バリデーションは、図1の8つのステップで進む。

図1 滅菌バリデーションの一般的な流れ(8ステップ)
注目したいのは、温度測定そのものよりもその前後の工程に時間がかかっている点だ。具体的には、②センサーの前校正・補正、④⑥センサーの設置と回収、⑧バリデーションレポートの作成の3点である。これらは、どの測定システムを選ぶかによって所要時間が大きく変わる工程でもある。
では、これらの工程を短縮しても規制上の問題はないのか。次章では、温度測定に関して規制が何を求めているのかを確認する。
2. 温度測定に規制が求めていること
■ 改正GMP省令とバリデーション指針
2021年8月1日に施行された改正GMP省令(令和3年厚生労働省令第90号)では、第13条のバリデーションの定義そのものは変わっていない。一方で、計画と結果は品質保証を担う組織に報告すること、変更管理の対象を広げ、変更後にその目的が達成されたかを評価することなどが求められるようになった。あわせて、記録の信頼性、すなわちデータインテグリティ(DI)を確保するための要件が省令に盛り込まれた。
同日に通知された「バリデーション指針」(旧・バリデーション基準)では、バリデーションマスタープラン(VMP)が明文化された。再バリデーションの時期と項目は、安定性モニタリングや製品品質照査の結果を踏まえて製造業者が定めるものとされている。
■ 最終滅菌法による無菌医薬品の製造に関する指針
滅菌工程の温度測定について、より具体的な考え方を示しているのが本指針(2012年11月9日改訂)である。主な要点は次のとおり。
• 運転時適格性評価では、空載状態でのチャンバー内の温度分布を確認する
• 温度の測定点は、缶体の大きさと形状に応じて適切に決める
• 特に重要な測定ループの校正は、公的標準にトレースできること
• センサーの種類・精度・材質や設置位置は、滅菌工程の特性や要求条件に照らして選ぶ
• 定期的な再バリデーションは、特定されたワーストケースやワーストポイントを考慮して計画する

基準温度計と校正用機器を用いた温度ロガーの校正(提供:同社)
■ PIC/S GMP Annex 1(2022年改訂)
無菌医薬品の製造に関するPIC/S GMP Annex 1は2022年に全面改訂され、2023年8月25日に発効した。品質リスクマネジメント(QRM)と汚染管理戦略(CCS)を軸に要求が具体化されており、湿熱滅菌についても次のような記述がある。
• ワーストケースとされるロードパターンについて、加熱滅菌サイクルを少なくとも年1回再バリデーションする(8.39)
• 各滅菌サイクルを、適切な精度を持つ機器で記録する(8.50)
• 制御用・記録用プローブの位置が適切であることを、独立したモニタリングプローブで検証する(8.51)
• 滅菌時間の計測は、ロード全体が所定温度に達してから開始する(8.52)
日本は2014年にPIC/Sに加盟しており、国内の製造所にも同等の水準が求められる流れにある。「少なくとも年1回」の再バリデーションを滅菌器ごとに継続するには、1回あたりの工数を下げることが不可欠である。
■ ER/ES指針と21 CFR Part 11
温度データやバリデーションレポートを電子的に扱う場合、国内では「電磁的記録・電子署名利用のための指針(ER/ES指針)」、米国では21 CFR Part 11が基準となる。いずれも、アクセス権限の管理、監査証跡、電子署名によって記録の真正性を担保することを求めている。
この観点から注意したいのが、測定データを表計算ソフトに移して手作業でレポートを作る運用だ。転記や計算式の誤りというヒューマンエラーの余地があるうえ、変更履歴を追えないため、DIの面でも説明が難しくなる。
■ 規制が求めているのは「2つの信頼性」
| 規制・ガイドライン | 温度測定に関わる主な要求 |
| 改正GMP省令(2021年8月施行)・バリデーション指針 | バリデーションの計画・報告、変更管理、DIの確保 |
| 最終滅菌法指針(2012年改訂) | 温度分布の確認、公的標準へのトレーサビリティ、工程に合ったセンサー選定 |
| PIC/S GMP Annex 1(2023年8月発効) | 年1回以上の再バリデーション、独立プローブによる検証、適切な精度での記録 |
| ER/ES指針・21 CFR Part 11 | アクセス権限、監査証跡、電子署名 |
こうして並べると、規制が求めているのは、正しく測れていること(精度とトレーサビリティ)と、その記録が信頼できること(DI)の2点に集約される。手順を省いて工数を減らすことはできない。現実的なのは、この2点を満たしたまま作業を軽くできる測定システムを選ぶことだ。
3. 測定システムの選び方で工数は減らせる
■ 効率化の3つのポイント
第1章で挙げた3つの工程は、いずれも測定システムの選択で大きく変わる。
| 工程 | 従来(熱電対・表計算ソフト) | 見直し後 |
| ② 前校正・補正 | 前校正に加え、精度が足りなければ補正が必要 | 安定性と精度の高い測温抵抗体(PT-100)で、前校正のみで済む |
| ④⑥ 設置・回収 | センサー用ポートから挿入・取り出し。大型設備では固定が難しく、断線リスクもある | ワイヤレスロガーを庫内に置き、扉を開けて取り出すだけ |
| ⑧ レポート作成 | 統計値やグラフ、合否判定を手作業で作成。 測定より時間がかかることも |
専用ソフトウェアで統計計算、F値計算、合否判定を自動化 |

左:有線システムはセンサー用ポートから挿入する。右:ワイヤレスロガーは庫内に置くだけ(提供:同社)
■ 測定方式の比較
ワイヤレスの温度ロガーには、測定後にデータを読み出す方式と、測定中にデータを確認できるリアルタイム方式がある。
| 比較項目 | 有線システム (熱電対など) |
読み出し式 ワイヤレスロガー |
リアルタイム ワイヤレスロガー |
| センサーの設置・回収 | 時間がかかる | 短縮できる | 短縮できる |
| 断線リスク | 高い | 低い | 低い |
| 測定中のモニタリング | 可能 | 不可(測定後に読み出し) | 可能 |
読み出し式は設置の手間を減らせるが、測定が終わって初めて不具合に気づき、最初からやり直すことになりかねない。リアルタイム方式は、有線のモニタリング機能と無線の設置の手軽さを両立させる。
■ Lives Internationalのリアルタイムワイヤレス温度ロガーシステム
株式会社ライブズ・インターナショナル・ジャパンは、1998年にフランスで創業した医薬品業界向け温度測定システムメーカー、Lives Internationalの日本法人である。同社のシステムは、温度ロガー、データを送受信するアクセスポイント、専用ソフトウェアの3つで構成される。

システム構成。温度ロガー、アクセスポイント(右)、専用ソフトウェア(提供:同社)
■ 温度ロガー GMP-F-30H-RF

リアルタイムワイヤレス温度ロガー(提供:同社)
• 測定範囲−90〜140℃、精度±0.1℃。オートクレーブからディープフリーザーまで、1台で複数の設備に対応する
• 基準温度計にも使われる4線式PT-100を採用し、前校正時の補正の手間を省く
• 筐体は熱伝導率が低く耐久性の高いPEEK製
• 内蔵メモリは32,000データポイント(5秒間隔の測定で約45時間)
■ アクセスポイントとリモートアクティベート
無線の通信距離は最大121m。同社独自のリモートアクティベート機能により、ロガーを先に庫内へ設置して扉を閉めたあと、全台をまとめて遠隔操作で測定開始できる。測定中のデータはリアルタイムに確認でき、測定後のデータの回収も遠隔操作可能 。
■ 専用ソフトウェア XpertLog
• 21 CFR Part 11準拠(アクセスレベル設定、監査証跡、電子署名)
• トレンドグラフ、F値計算、事前に設定した合格基準による自動合否判定、ロガー配置を示した画像レポート
• Ametek、Flukeなどの校正用機器と連携し、ロガーのユーザー校正を自動化
• サイトライセンス(インストール回数無制限)

XpertLogの画面。左:自動合否判定・F値計算の結果要約、右:トレンドグラフ(提供:同社)
オートクレーブでの測定は、ロガーを庫内に置き、扉を閉めて遠隔で測定条件を設定し、測定後にロガーを回収すればよい。そのまま事前設定の合格基準でレポートを作成できる。

オートクレーブ庫内に設置したロガー(提供:同社)
■ 導入事例
| 導入先 | 導入台数 | 導入の背景 | 成果 |
| 無菌医薬品メーカー | 25台 | 注射剤の生産量が増え、スケジュールがタイトに | センサー設置時間を50%削減。前校正の補正が不要に。バリデーションによる設備のダウンタイムを3日から1.5日に短縮 |
| 細胞培養加工施設の運営やバリデーションを受託する企業 (バリデーション受託) | 20台 | 増えるバリデーション依頼への対応 | 自動合否判定でレポート作成の実作業を4〜5日から1日に。年間約1,000万円のコスト削減 |
無菌医薬品メーカーでは、滅菌バリデーションに加えてSIPやフリーザー、凍結乾燥機の温度測定にも同じロガーを使っている。受託企業では、以前使っていた読み出し式ロガーでは測定後にやり直す場面があったが、リアルタイムモニタリングで測定中に対応できるようになったという。

無菌医薬品メーカーでの導入事例(提供:同社)
■ 導入のハードルを下げる選択肢
初期投資や運用体制が課題となる場合に備え、同社は次のような選択肢も用意している。
• レンタルサービス:最短1週間から。校正証明書付きで出荷し、合否判定基準のプリセットと無償のオペレーショントレーニング付き
• 現地バリデーションサービス:同社の技術スタッフがオートクレーブ、トンネル滅菌機、冷蔵庫、フリーザー、凍結乾燥機などのバリデーションを実施
• 国内での修理/校正:大阪の技術拠点での定期校正修理に対応し、校正中の代替機もレンタルできる
4. まとめ
滅菌バリデーションへの規制要求は、改正GMP省令とPIC/S GMP Annex 1の改訂を経て、測定の信頼性とデータの信頼性の両面で高まっている。年1回以上の再バリデーションを継続しつつ生産を止める時間を抑えるには、手順を削るのではなく、作業そのものを軽くする必要がある。
その出発点は、「前校正・補正」「センサーの設置・回収」「レポート作成」の3工程を見直すことだ。高精度なセンサー、リアルタイムに監視できるワイヤレスロガー、Part 11に対応した専用ソフトウェアを組み合わせれば、規制への対応と工数削減を両立できる。今回紹介した事例では、設備のダウンタイムが半分になり、レポート作成の実作業は5分の1以下になった。
自社の滅菌バリデーションでどの工程に時間がかかっているかを一度洗い出し、測定システムの見直しを検討してみてはどうだろうか。
【出典】
• 「最終滅菌法による無菌医薬品の製造に関する指針」の改訂について(平成24年11月9日 事務連絡)
• Publication of revised PIC/S Annex 1(PIC/S)
• EU GMP Annex 1: Manufacture of Sterile Medicinal Products(2022年8月25日)
【お問い合わせ先】
株式会社ライブズ・インターナショナル・ジャパンでは、導入事例資料の提供、レンタルによる試行導入、現地バリデーションのご相談を受け付けている。
• Web:https://lives-international.co.jp/
• E-mail:contact_japan@lives-international.com
• TEL:03-6778-8213
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