薬事屋のひとりごと【第18回】

PMDA医療安全情報「インスリン専用注射器の使用について」

https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/medical-safety-info/0001.html

筆者が気になる通知をひろいあげて、ひとりごとをお伝えするシリーズです。ひとりごとは読み流していただき、読者の皆さんが通知をお読みの上、しっかり内容を把握いただくと助かります。

糖尿病治療の要であり、多くの患者の命を支えている「インスリン」。普段、私たちが目するのは患者自身が使用する「ペン型」の注射器かもしれません。しかし、救急外来や集中治療室で点滴に混ぜて投与する場合には、「バイアル」と呼ばれる小瓶に入ったインスリン製剤が使用されるようです。この「バイアル製剤」の取り扱いにおいて、一歩間違えると患者の命を危険に晒す重大な医療事故が繰り返し起きており、PMDAから医療安全情報がでています。

インスリンの最大の特徴であり、事故の根本的な原因となるのがその「濃度」です。インスリンのバイアル製剤は、1mLあたり100単位という非常に高い濃度に統一されており、1単位はわずか0.01mLというごく微量なのです 。

報告された27件の過量投与事故(医療事故情報収集等事業の報告:2018年1月〜2023年6月)のうち、20件(約74%)でインスリン専用注射器が使用されていませんでした。通常、インスリンをバイアルから吸い上げる際は、目盛りが「mL」ではなく「単位(UNITS)」で表記された「インスリン専用注射器」を必ず使用しなければなりません。しかし、この専用注射器を使用せず、一般的な汎用注射器(1mLや10mLの注射器)を使い、桁違いの過量投与が発生したようです。

実際に起きた医療事故のケース

ケース1:新人看護師の「全量吸い上げ」
血糖コントロールのため、輸液にインスリン「5単位」を混ぜる指示が出された。経験の浅い看護師は、インスリン専用注射器の使用やその危険性を十分に認識しておらず、10mLの汎用注射器を使い、バイアルに入っているインスリンを「空になるまで(10mL=1000単位)」吸い上げて輸液に混注してしまった。

ケース2:救急外来での連携ミスと「1mLの錯覚」
救急処置室に意識レベル低下で運ばれた患者に対し、医師が「インスリン10単位の静脈注射」を指示した。

 

 

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