「マラソン」第24回
54 信越五岳100mile:見送る側から、見送られる側へ
2022年9月、土曜日の夕刻。
私は長野県・斑尾のスタート地点に立っていた。
友人が運転してくれた車の中で仮眠をとろうとしたが、興奮なのか一睡もできない。
それでも、不思議と体は軽かった。(体重は70キロ肥え…)
「5、4、3、2、1……スタート!」
カウントダウンとともに、夜空に大きな花火が打ち上がった。
コロナ禍で2年間も開催できなかったこの大会。
主催者の石川弘樹さんたちの執念と、ここに来られた選手たちの喜びが、その花火に凝縮されているようだった。
3年前、私はここで100マイルの選手を「格好いいなぁ」と羨望の眼差しで見送る側にいた。
しかし今は、私が見送られる側にいる。
一度は、コロナ禍などもあり、出走条件も叶わないと考え、あきらめかけた信越五岳。
ライトを点灯させ、漆黒のトレイルへ吸い込まれていく500人の列に自分がいることが、すごくうれしかった。
「信越五岳を楽しもう!」
そう心に秘めて皆さんに見送ってもらった。
55 信越五岳の洗礼?カレー3杯の男??
初の100mileレース。
簡単にいくわけはなく苛酷を極めた。
やはり未だ9月、夜と言っても暑い。
多くのランナーが暑さにやられ、例年以上に脱落していく。
私はあえて集団の最後方からスタートし、楽しみながら、気持ちはゆっくりと、しかし確実に無理ないペースで一人、また一人と抜き去っていった。
50キロ地点のエイドステーションでクロトさんと再会した。
クロトさんは既に消耗しきっていた様子で、その後少し、並走するものの「先に行ってくれ」と言われ、私は彼の言葉を背に、ギアを上げることとした。
明け方の70キロ地点。山を走ることに集中していたその時、視界の端を「黒い弾丸」が横切った。
直後、耳たぶと腕に、釘を刺されたような激痛が走る。
「イタッ!」
スズメバチだった。
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