私が経験したGMPの半世紀 品質を保証する科学:GMPの歴史と本質【第1回】
【第1回】
私が医薬品のGMPに関わって約半世紀が経過しました。その間GMPは大きく成長し、バリデーションやクオリフィケーションなど、なじみのないGMP関連の専門用語が導入されました。成長の過程で、用語の意味や使われ方が微妙に変化しているように思います。私が経験したGMPにまつわる話を通じ、混乱している周辺の用語の意味を明確にしたいと思い、この原稿を書きました。「GMPは法律ではなく、品質を保証するための科学である」ことが理解されれば幸いです。
GMPの誕生
飛行機や列車の中の手荷物中のモバイルバッテリーが突然発火しているニュースを見て、恐怖を覚えられた方も多いと思います。発火の原因には、例えば製品に大きな衝撃が加わるなど製品自体の問題も考えられますが、使用者に何ら落ち度がない場合も多いと聞きます。ニュースによると、過激な価格競争よる安易な製法変更等が事故の一因であることは疑う余地もありません。製品の品質に責任を持つべき企業が、その製品が、どこで作られた部品を使ってどのようにして組み立てられたかを把握していないという状況に驚かされると同時に、対応の無策さに怒りさえ覚えます。
しかし、一昔前の日本の医薬品業界も同じような状況でした。原価低減や品質改善を目指した改善運動が奨励され、製造現場の人たちも活発に製造の改良を行っていました。確かにプロセスの歩留まりや生産性は上がっていたのですが、ルールに則って、製法変更が管理されていたわけではありませんでした。そのため、何時、誰が、どのようにして変更したのかわからないような状況も起こり得ました。製造指図書自体は存在していたのですが、改訂されることもなく、気が付いたら、元の製法と異なった製法で製品を製造していたこともあり、品質に問題がなければよいとされ、誰も気にも留めていませんでした。
このような状況下、1950年代後半から60年代初頭にかけて、睡眠薬「サリドマイド」による深刻な薬害が世界規模で発生しました。悲惨な事故でしたが、このことがきっかけで、医薬品の「有効性」の証明が義務付けられるとともに、製造管理の基準を設ける権限がFDAに認められ、医薬品GMPが導入されました。1963年のことです。
FDAのGMP導入以来、半世紀以上が経過し、今や、GMPは科学に基づく品質保証手段として、世界標準となり医薬品の品質向上に大きな役割を果たすようになりました。FDAは、医薬品業界に対し、FDAが発出するGMP関連のニュースに気を配り、最新のGMPを遵守して医薬品を製造することを期待して、単にGMPではなく、わざわざ頭にCurrent のCを付けCGMPという用語を使っています。FDAが世界のGMPをリードしているという気負いを感じます。
GMPの本質:品質管理から品質保証へ
世界には、米国のCGMP、WHOのGMP、PIC/SのGMP、EUのGMPなど、様々なGMPが存在しているように見えますが、患者に良質な医薬品を届けることを目的とするという意味で本質的に同じです。各国のGMP条文の文言こそ違いますが、GMPとは、科学的根拠に基づいて、製造に起因した欠陥のある医薬品を、まず第一に造らないこと、もし作ってしまったとしてもそれを出荷させないことを目的として導入された、医薬品製造業者が遵守すべき基本的なルールです。
コメント
/
/
/
コメント