安定性試験で注意すること

安定性試験で注意すること


 PHARM TECH JAPAN ONLINE 2025/11/07に下記の記事がありました。

2025年3月発行の書籍「“品質力”をアップする ゼロから学ぶ医薬品品質統計」(福田 晃久/著)の内容から、一部抜粋・再編集して紹介します。
「次は過去数年分の安定性モニタリングの結果をまとめたときの経験です(図3-3)。各ロットの経時変化グラフは相変わらず凸凹が目立っていましたが、複数ロットの平均値で見ると意外にも凹凸が小さかったのです。とても面白い現象だと感じました。その理由がわかれば承認申請時の安定性試験にも役立つかもしれません」 
 


『ゼロから学ぶ医薬品品質統計 安定性試験あるある』 (PHARM TECH JAPAN Online 2025/11/07)
https://ptj.jiho.jp/article/164672 より引用(一部略(図3-3は原文で確認ください)、黄色マーカーは筆者(脇坂)による)

 理由について考えてみました。
医薬品製造所のQA長/QC長経験者のコメント
 「この製品は3ロットの平均で示したような含量の低下を示す製剤であり、室内再現性のバラツキが大きいためにロット個々では凸凹が目立っているが、標本サイズ(n数) が大きくなるほど、推定精度が上がるため、3ロットの平均値で見ると凹凸が小さくなるのでは。
n数を多くするとさらに凸凹が小さくなるであろう」

私のコメント
 安定性試験での凹凸はよく経験します。
 主因の一つとして標準品由来のばらつきが強く疑われます。
 安定性試験はある程度検体をまとめて複数行います。その時、標準品のn数はいくらでしょうか? 日局、承認書に従えば一般にn=1です。標準品の秤取量が少ない場合、薬包紙で量っている場合、吸湿性の高い物質の場合など、バラつきやすい経験を実感しています。3か月で含量が低下し、6か月で含量がUpして低下していなかったことは分離分析法では考えにくいです。その凹凸はまさに標準品によるバラツキではないでしょうか。
 UV検出器の場合、UVランプの劣化がなければ面積値はあまり変化しません。類縁物質や不純物と主薬のピークとの分離が不完全だと、HPLCの溶媒組成やpH、カラムの劣化などでピーク処理に違いが出てくる場合がありますが、それはHPLCチャートを検証すればわかります。
 ではどうすれば凹凸を防ぐことができるかは下記になります。

①標準品のn数を複数にする。⇒1/√nでバラツキは縮小します。n=3だと1/√3=0.577となり約半分になります。
②含量の分かっている既知サンプルかを同時に分析します。直近の出荷ロットでも良いかもしれません。
③過去の安定性試験の経時変化と比較し、違いがないかを確認します。
④面積値を比較します。UVランプの劣化がなければ大きくかわりません。
⑤初期とこれまでの安定性試験データから何か課題はないかとAIに確認します。
 

参考:
「安定性モニタリング&規格設定に活用! 「許容区間」の言葉をご存知ですか?」Pharm Tech Japan Online 2025/11/28  https://ptj.jiho.jp/article/164826
「安定性モニタリングの規格不適合による製品回収と欠品のリスクを低減するために」Pharm Tech Japan Online 2024/03/29  https://ptj.jiho.jp/article/156397

安定性試験の場合は分析バリデーションの室内再現性の精度(バラツキ)になります。できれば自社開発品であれば研究所から、受託であれば製販から分析バリデーションレポートを入手し事前に確認しておくことが必須です。セミナーで「分析バリデーションレポートを入手し確認保管していますか?」と尋ねるとほとんどは入手されていません。中には製販からもらえませんとの回答もあります。試験を委託している製造所に分析バリデーションレポートを提供しない製販のQAは何を考えているQAかと思ってしまいます。試験のSOP通りにできればよいと思っているのでしょうか? 試験をしっかりと理解して試験をしてもらいたいと思っていないのです。それだと想定できない間違いや問題を引き起こします。

参考:
「ブラインドコンプライアンスに陥りやすいGMP」Pharm Tech Japan Online 2025/03/07 https://ptj.jiho.jp/article/161163

 

 

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