最新コスメ科学 解体新書【第14回】
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コスメと手触り④ 「しっとり」の正体
2015年、ヒト指のモデルが自然でなめらかな動きでモノに触れた時に発生する力学刺激をモニターすることのできる「バイオミメティック触覚センシングシステム」が完成して、いよいよ「しっとり問題」に取り組むことになりました。
悩ましかったのが実験に使うサンプルの選択です。ほとんど水を含んでいないのに湿っているように感じる「しっとり」の本質を解明するのに適切なサンプルは何なのか?実験を担当してもらった大学院生のKiさん、Kuさんがしっとりしていそうなモノを集めて触りまくり、さんざん悩んだ末に分かってきたのが、ある種の化粧品用のパウダーは断トツにしっとり感のスコアが高いということでした。布・皮からパン・カステラまで、世の中は「しっとり」をうたったアイテムで溢れていますが、実際に指で触ってスコア化したところ、OTS処理セリサイトとラウロイルリシンというファンデーションやアイシャドウに配合されているパウダーのスコアが高かったのです。そこで、これらのパウダーを中心として、皮・繊維・金属からプラスティックまで、しっとり感の異なる12のアイテムを対象に評価をすることにしました。
まずは官能評価です。20人の学生さんに被験者をお願いして、サンプルに触り、「しっとり感」に加えて硬い・やわらか、温かい・冷たい、なめらか・ざらざら、すべる・くっつく、湿った・乾いたという手触りの質感の根本となる10の項目を評価して貰い、化粧品用パウダーなどの「しっとり感」の強いアイテムはなめらか感と湿り感が高いことが明らかになりました [1]。
次はこれらの触感がどのようにして生まれてきたのか、物理的な発現メカニズムを明かにしなければなりません。なめらか感については比較的すぐに謎が解けました。今回、われわれが開発した「バイオミメティック触覚センシングシステム」でこれらのアイテムを擦ってみたところ、なめらか感の高いモノはしゅう動時に指モデルに加わる力が低く、その変動が小さいことが確認されました。
さて、問題は湿り感です。化粧品用のパウダーのように、液体を一滴も含んでいないのに湿った感じがする、というのは何なのでしょうか?まずは、念のためカールフィッシャー法という微量の水分を計測する方法を試してみましたが、湿り感の官能評価との間に相関はありませんでした。また、洗濯物に触れた時、ヒヤッとすると湿った感じがする、という報告があったので、熱伝導度や熱流束という熱に関するパラメータも調べたのですが、これも関係ない・・・。
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