化学屋の問わず語り【第4回】
GMPを支える生産技術: タンクに息をさせる
私の職歴の半分以上はGMP品質保証ですが、QA職が生産技術に疎いと、現場とのコミュニケーションが上手くいかないことを痛感してきました。GMP Platformの読者様にはQA職の方が多いと思うので、この連載では、QA職の方々に知っていただきたい生産技術を取り上げることを大切にしたいと思っています。
さて、連載の第2回で、私が石油会社の出身だと書きましたが、皆さんは製油所や国家備蓄基地の原油タンクを見たことがあるでしょうか。地上設置型タンクの容量は、1基で約10万kL、ドラム缶50万本分にもなります。桁数が大きすぎてサイズ感が伝わらないかもしれませんが、例えば、直径 82 m、高さ 24 m、世界最大の旅客機 エアバスA380(全長 73 m、全幅 80 m、全高 24 m)がピッタリ納まるくらいの、とてつもなく大きなタンクです(下図左)。

右の写真は鹿児島県にある国家備蓄基地の一画ですが、下段中央のタンクの影に不自然さを感じませんか。これは、空に近くなったタンクの屋根が沈み込んでいる状態で、この構造は「浮き屋根式」と呼ばれます。貯油量は満タン~1割くらいの幅で変動するので、タンクの屋根(天井)が固定されていると油面上の隙間の圧力が大きく増減し、注入・払出が困難になるだけでなく、タンク構造の破壊を招くため、屋根が上下に動くようになっているのです。屋根とタンク内壁の間には雨水の侵入や可燃性蒸気の漏洩を防ぐゴム製のシール材があるほか、地震などで屋根がバタつかない機構も備えられていますが、屋根を昇降させる動力装置はありません。内部を空洞にした軽い屋根が、文字通り「油面に浮いている」のです。
このような巨大タンクと比べると、例えば、空港の燃料タンクの容量は数十分の1以下、医薬品工場の屋外タンクは数千分の1以下で、浮き屋根式ではなく、タンク容積は固定されています。しかし、容積が小さくても、貯蔵量の増減に伴う圧力変化が、注入・払出の障害や構造破壊のリスクとなるのは同じなので、「シュノーケル」で息をする(下図右)ような「通気管(ベント)」を設置します。燃料用の軽油などでは、引火防止のための金属ネット、蒸気が放散する開口時間を最短にするための「大気弁」を付設し、開口部は雨水の侵入を防ぐために下向きにします(下図左、「危険物の規制に関する規則」第20条)。タンク内圧が上がるとタンク内の空気が抜け(破線左側の弁位置、ピンク矢印の気流)、タンク内圧が下がると空気を吸い込むのです(下図左:破線右側の弁位置、水色矢印の気流)。

なお、左の図は実機の構造例ではなく、公開情報を参考に自作した概念図(以降の構造図も同じ)なので、不正確な点があるかもしれませんし、泳げない私はマリンスポーツにも縁がありませんが、「タンクが息をするイメージ」をお伝えできていれば幸いです。
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