派遣人材を人財にする ―医薬品製造所における経験・技能を継承するために―

派遣人材を人財にする
―医薬品製造所における経験・技能を継承するために―


1.はじめに
 医薬品製造所では、製造部門だけでなく、品質管理(QC)や品質保証(QA)においても派遣社員が重要な役割を担っています。特にQCでは、分析機器の操作だけでなく、GMPの理解、SOPの習得、試験法・記録方法・データインテグリティ・OOS/OOT対応など、多岐にわたる教育と実務経験が必要です。
 しかし、十分な経験を積んだ派遣社員が派遣期間制限により職場を離れ、再び未経験者を一から教育する状況が繰り返されています。これは企業にとって教育コスト・品質リスクの増大につながり、派遣社員本人にとってもキャリア形成の機会を失うことになります。
 本稿では、派遣社員を「一時的な労働力」としてではなく、医薬品製造に必要な知識と技能を持つ専門人材として継続的に活用する仕組みを検討しました。さらに、派遣社員のキャリアアップと雇用不安の解消を両立させる視点を加え、持続可能な品質人材の確保について論じます。

2.「同じ会社で3年まで」ではない
 労働者派遣法では、派遣元事業主は、派遣先の「同一の組織単位」の業務について、同一の派遣労働者を3年を超えて継続して派遣することが原則としてできません。重要なのは、「同じ会社で3年間」ではなく、「同一の組織単位で3年間」という点です。
 厚生労働省は、組織単位を「課・グループ等のように業務としての類似性・関連性があり、その組織の長が指揮監督権限を持つ単位」と定義しています。名称ではなく実態で判断されるため、QCとQAは業務内容が異なり、それぞれ独立した組織と指揮命令系統を有していることから、別の組織単位として扱われます。

3.第1の提案―QCとQAの間で人材を活用する
 例えば次のようなキャリア形成が考えられます。
QC 3年間 → QA 1~3年間 → QCへ復帰
QCでは試験・分析・記録・OOS調査などの経験を積み、QAでは逸脱・変更管理・CAPA・文書管理・教育管理・自己点検など、品質システム全体を俯瞰する業務を経験します。
 QC経験者がQAを経験することで、 「試験を正しく行う」から「なぜその管理が必要なのか」へ視点が広がります。
 逆にQA経験者がQCを経験することで、 「現場でデータがどのように生まれるか」を理解し、実効性のあるQA活動につながります。
 このローテーションは単なる「3年ルールへの対応」ではなく、 品質部門におけるキャリア形成・多能化の仕組みとして位置付けることもできます。

4.第2の提案―地域の製薬企業間で経験者を循環させる
 同じ地域にある複数の医薬品製造所の間で、経験者を循環させる方法も有効です。
A製薬 QC → B製薬 QC → A製薬 QCへ再派遣
 派遣法の期間制限は「派遣先の同一組織単位」に紐づくため、派遣先が変われば期間は通算されない。また、派遣元に求められる雇用安定措置には「新たな派遣先の提供」が含まれ、経験者を地域内で活用することは制度趣旨とも整合しています。

 

 

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