GMPニュースウォッチ -ある老兵の視点-【10】

PFAS規制の波〜欧米・日本の最新動向


欧州議会の欧州議会調査局(EPRS)は、有機フッ素化合物(PFAS)に関する新たな趣意書(Briefing Paper)を発行した。PFASは、その安定した炭素-フッ素結合のため分解されにくく、「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」として知られる。世界中で土壌や水、ヒトなどから検出されており、特定のがんや免疫系機能障害等との関連性が議論されている。一方で、既知の1万種類以上のPFASの大部分について毒性学的データが極めて少ないことも強調された。今回の趣意書は、今後の法規制強化に向けた布石として、科学的知見や規制手続きを要約した極めて重要な位置づけとなる。 
日本の製薬業界にとって、PFAS規制はもはや対岸の火事ではない。欧州、米国、そして日本国内において、医薬品のグローバルサプライチェーンを揺るがす強力な規制の波が同時に押し寄せている。

欧州:包括的規制案と「必須用途」の議論
欧州では現在、広範なPFASの製造および使用を制限する規制案が議論されている。2023年に5カ国(ドイツ、デンマーク、オランダ、ノルウェー、スウェーデン)から提出された提案は、原則としてPFASの製造、市場への投入、使用を禁止するものだ。
EPRSは、欧州化学物質庁(ECHA)における手続きの最新進捗も報告している。ECHAのリスク評価委員会(RAC)の声明は2026年3月3日に採択され、同じく社会経済分析委員会(SEAC)の声明草案は3月10日に合意された。SEACの最終声明は2026年末までに発表される見込みである。最終的に欧州委員会(EC)は、両委員会の意見を考慮し具体的な規制案を提示する。産業界にとって特に重要なのは「重要・不可欠な用途に関するガイドライン」である。医療機器や医薬品を含む戦略的分野では、代替手段が存在せず、かつ厳格な排出・管理要件を満たす場合に限り、移行期間や適用除外が検討される。

米国:州法のパッチワークと連邦政府の規制強化
世界最大の市場である米国では、規制が極めて複雑化している。カリフォルニア州やミネソタ州など、複数の州が独自に「意図的に添加されたPFAS」を禁止、あるいは報告を義務付ける州法を2025年から段階的に施行しており、全米に製品を展開する上での大きな壁となっている。 連邦レベルでも、2026年3月に「永遠の化学物質規制および説明責任法案(Forever Chemical Regulation and Accountability Act of 2026)」が連邦議会に再提出され、非必須用途のPFASを10年以内に段階的廃止する全国的な枠組みづくりが模索されている。また、環境保護庁(EPA)による有害物質規制法(TSCA)に基づく厳格な報告義務や、米国食品医薬品局(FDA)による包装材のフッ素化処理に対する監視強化など、製薬業界の資材調達に直結する規制網が急速に狭まっている。

 

 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます