化学屋の問わず語り【第3回】
L字契約 ~ AI活用の落とし穴
人は誰しも得手不得手があると思いますが、私はITリテラシーがダメダメで、勤務先のIT部門には ご迷惑を掛け通しでした(自覚しているのが救いと思いたい)。とりわけ、急速に進歩・普及しつつあるAIについては、恐る恐る使っているのが実情ですし、本稿が公開されるときには執筆時と状況が変わっているかもしれませんが、今回は化学屋の視点を少し離れて、AIの活用について考察してみようと思います。
いきなり話が飛んで恐縮ですが、皆さんは「L字契約」という言葉をご存じでしょうか。
GQP省令 第7条において、製造販売業者は、「製造業者等における製造管理及び品質管理の適正かつ円滑な実施を確保するため」の取決め、いわゆる「品質契約」を、製造販売承認事項に含まれる製造所(医薬品医療機器等法 第2項 第二号、第四号 などを参照)の全てと結ばなければならないと定められています。一方、製造販売業者は直接の取引先と「取引契約」、すなわち供給契約や受委託契約を結びますが、医薬品のサプライチェーンの形態は複雑で、上流工程の製造業者や流通途中の保管製造業者などとは取引契約を結ばない(特に海外取引では結びづらい)ことがあるのも実情でしょう。また、「品質契約」は「取引契約」に従属するのが通例なので、製造販売業者は直接の取引先と品質契約を結び、サプライチェーン上の他の供給者とは「直接の取引先」が契約することによって間接的にGQP省令の要件を満たす形態が「L字契約」と称されています。
GQP省令が施行された2005年前後、私は医薬品製造販売業者の品質保証部門に勤務していました。原料や中間体を輸入に頼っていた品目も多々あったので、取引契約のない業者との品質契約締結の必要性(日本の法令要件)を説得したり、監査の制限(頻度、人数、直接取引先以外はオブザーバーとか)に妥協したり、何かと苦労しましたし、日本の法令要件を受け入れなかった原料供給者との取引停止によって承認整理に至った自社製品もありました。
同時期の厚労省通知、平成16年(2004年)薬食発第0922001号に「当面の間は、旧法の輸入販売業の許可要件である外国製造業者との取決め内容を活用して、製造販売業者が直接外国製造業者と取り決めるべき内容も含めた形式で、製造業の許可を取得した旧法の輸入販売業者と取り決めるなど、製造販売業者と当該外国製造業者との権利・義務関係に支障を来さない限りにおいて他の方法によることを否定するものではないこと。」という、前述した「L字契約」を「当面の間」容認するような記載がありました。その後、GQP省令に基づく契約の締結努力を怠った企業にはお咎めがありましたが、努力を継続していた企業は大目に見られていたように感じていましたし(私見です)、厚労省や機構は、PIC/S加盟の過程で欧米などに日本の法令趣旨を説明する努力をしてきたであろうと拝察しますが(私見です)、「当面の間」を盾とする「行政の不作為」があったのではないかという不信感(私見です・・・しつこい)もありました。
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