最新コスメ科学 解体新書【第31回】
コスメ業界研究④ 化粧品テクノロジーの未来
1980年代からの界面化学やナノテクノロジー、そして皮膚科学の発展を経て、化粧品技術は今、大きな歴史的転換期を迎えています。地球環境への配慮や動物福祉に対する世界的な意識の高まり、さらには人工知能や先端バイオテクノロジーといったデジタル革命が、化粧品開発のあり方を根本から変えようとしています。令和の時代における最新の技術トレンドと、これからの化粧品業界が目指す未来の展望について紐解いていきます。
技術の進化とともに、化粧品の作り方や材料選びのルールも地球規模でアップデートされています。欧州をはじめ世界的な流れとして、2013年以降、化粧品およびその原料に対する動物実験は完全に禁止または規制されました。これにより、まったく新規の化学物質を一から安全性を確かめて使うアプローチから、すでに安全性が確認されている複合材料や、医薬品や日用品の分野で安全性が実証されている材料を高度な技術で工夫して転用するアプローチへと大きなシフトが起きています。水と油を混ぜる界面活性剤においても、環境負荷の少ない植物由来の原料や、自然界で分解されやすいサステナブルな新素材の開発が進んでいます。地球環境を守りながら、高い機能性を両立させることが、現代の化粧品開発における最優先課題となっています。
近年では、これまでになかった画期的な材料加工技術や洗浄技術が次々と発表されています。日焼け止めやファンデーションに欠かせない酸化チタンですが、白浮きしやすかったり独特のキシつき感があったりすることが長年の課題でした。コーセーとテイカによる研究をはじめとする最新のアプローチでは、大きな酸化チタンの表面に酸化鉄を均一にコーティングする技術などが登場しています。これにより、お肌を効果的に保護しながらも自然な血色感や透明感を演出する新しい粉体が誕生しています。またメナードなどの研究では、プラズマの力を利用して粉体の表面状態を極限まで滑らかに改質する液面プラズマ分散技術などが開発されています。皮膚にのせた瞬間に滑らかに広がる、これまでにない極上の使い心地を実現する技術として注目を集めています。さらに花王などの研究では、お肌に必要なセラミドなどのうるおいは残しつつ、お肌のベタつきやトラブルの原因となる皮脂中の特定の不飽和脂肪酸だけを選んで除去するという高度な選択的洗浄技術が確立されています。洗顔やクレンジングの概念を、一律に洗い流すものから不要なものだけを狙って落とすものへと進化させています。
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