ある老兵の視点【4】

PIC/S PI 006-4大改訂
PIC/S査察基準に見るバリデーションの新常識

PIC/Sのガイダンス「PI 006-4(クオリフィケーションとバリデーションに関する推奨事項)」が、2007年の第3版以来約19年ぶりに大改訂され、いよいよ2026年10月に施行されます。この改訂は日本の製薬企業のQA担当者にとって、バリデーションの概念そのものを再構築する重要な転換点となりますので、このコラムのNo.3に続き再度取り上げます。

最大のポイントは、クオリフィケーションとバリデーションの全段階を通じて「ライフサイクルアプローチ」と「品質リスクマネジメント」が組み込まれたことです。これまでのように、規定されたロット数の製造をもってバリデーションが完了するような「一過性のイベント」という認識は通用しなくなります。

バリデーションマスタープランの位置づけも大きく変わり、単なる初期計画書ではなく、定期的なレビューと更新が義務付けられた「生きた統制文書」となります。QA担当者は、ワーストケースアプローチの妥当性やリバリデーションの頻度設定の根拠を、科学的かつリスクベースでバリデーションマスタープランに明記しなければなりません。さらに強調したいのは逸脱管理の厳格化です。バリデーション中に発生した逸脱は、単にプロトコルや報告書の中に留めるのではなく、その施設の公式な逸脱管理システムに登録し、その後の商用生産での調査に確実にリンクさせることが要求されます。

また、クオリフィケーションのアプローチも近代化され、従来のようなIQ/OQ偏重から、DQやPQへのシフトが鮮明になりました。ASTM E2500に示されるベリフィケーション・アプローチや、FAT(工場受入試験)やSAT(現地受入試験)をクオリフィケーション・プロセスに統合する事前適格性評価(Pre-qualification)の概念が正式に導入されました。

一方で、過去の実績データに依存するレトロスペクティブ・バリデーションは完全に削除され、常に未来を見据えた管理状態の維持が求められます。この新ガイドラインは2026年10月の施行ですが、対応には十分な準備期間が必要です。QA担当者は、現行のバリデーションマスタープランや品質マネジメントシステムがPI 006-4の求める基準、特にライフサイクルマネジメントとデータインテグリティの要件を満たしているか、今すぐギャップ分析を開始する必要があります。この文書自体は「査察官向けのガイダンス」ですが、「査察官が現場で何を期待し、どこを重点的に確認するか」を示す事実上の査察基準となるため、規制当局によるGMP査察に直結する極めて重要な文書です。

本記事では、この大改訂の重要テーマと、製薬企業の現場に与える具体的な影響を解説します。

 

 

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