ツルハシを振ったら、ゴールドではなくプラチナだった【第5回】
第5回|覚醒
エンジニアリングとは何か、から始まった営み
プロローグ:社会人DAY1からの命題
採用の最終面接で、面接官に問われた。30年近く前のことである。
「エンジニアリングとは何か、あなたの言葉で答えてください」
志望動機ぐらいで、ほぼ丸腰で臨んだので、とっさに言葉が出なかった。
どう切り返したか覚えていないが、とても重要なことを聞かれたような不思議な重さをもって残った。自分はまだこの問いに答えられるだけの思索を積んでいない、そう感じた。
社会人になってからも、その問いは私の底流に居座り続ける。
図面を描きながら、計算をしながら、現場を歩きながら、先輩たちの判断に触れながら…
「エンジニアリングとは何か」
答えを持てないまま、20年以上が経った。
ロンドンで見た四つの言葉
ロンドンのハイドパークにアルバート・メモリアルという記念碑がある。
19世紀の産業文明を讃えるこの建造物の台座には、四つの言葉が刻まれている。
Agriculture、Commerce、Manufacturing、そしてEngineering。
これを見たとき、Engineeringだけが異なる層に立っているように感じた。
農業は自然を耕す。商業は価値を交換する。製造業は素材を形に変える。
Engineeringは、これらすべてを司る層にあるように見えた。
世界の仕組みを読み解き、成立する条件を見つけ、再現性のある形へ変えていく。
Engineeringとは、世界に働きかけるための認識の枠組みなのではないか。
そんなやや大胆な仮説を立てつつも、まだ十分な答えにはいたらなかった。
AIとの対話
さらに時を経て、私はAIと「エンジニアリングとは何か」を何度も議論した。
対話を重ねたふとした瞬間に、アルバート・メモリアルで見た四つの言葉が突然よみがえり、これまでの仕事のモヤモヤが解けていく瞬間があった。
完成した図面からは、最終的な形状だけが残り、その形を成立させた条件や判断をくみ取り切れない。
設計、現場、トラブル対応、標準化。振り返ると、いずれも成立条件を見つけ、形にし、再利用できるようにすることを繰り返してきた。
20年以上を経て、たどり着いた一つの答えは、
エンジニアリングとは、形が成立する条件を発見し、記述し、再利用可能にする営みである。
プラントは、無数の条件が重なり合って成立している。
温度、圧力、流量、材質、強度、配置、操作性、安全性、施工性、保守性。
エンジニアは、それらを読み解く。互いに衝突する条件を組み合わせ、成立するスイートスポットなり妥協点を見つける。そして、図面や仕様書という形に記述し、現実の世界に実装する。この営みの根には、世界の理を理解し、目的に沿って組み上げる思考力がある。
エンジニアリングは、世界の理を再構築する哲学である。
AIと対話を重ねることで、自分の中に蓄積されていた経験知が整理され、一つの定義に導かれた。
これが、私にとっての覚醒だった。
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