【第32回】デジタルヘルスで切り拓く未来
「フィジカルAIが動き出す」
●要旨
フィジカルAI(人工知能)が注目されています。フィジカルAIには、物理的な作用点がありますが、まずは、状況判断というインプットに目配りしましょう。その上で、役に立つとは何かを真摯に考えておくことが求められるでしょう。
社会的な受容が整う中で、フィジカルAIを医療や福祉などで活用することが強く期待されています。何を叶えたいか、どうあれば私たちは嬉しいと思うか、改めて人間観察を行いながら、より良い社会を目指しましょう。
●はじめに AIの発達に関するニュースが溢れる
AIに関するニュースが溢れています。毎日何かが新しくなり、その数日後には誰かが比較表を作って解説が始まります。AIを使いこなすためのレクチャーもとても多くなりました。私たちの思うようなものを生成するには工夫が必要なようで、かつての不気味さは無くなってきたもののよく見るとどこかおかしい。それでも、AIと区別のつかない画像や文章、情報も見かけるようになりました。確かに業務効率は良くなった気はしますが、正しいかどうか確かめることも時には必要です。
一方で、フィジカルAIが注目されています。特に介護福祉の現場では、労働衛生の問題解決が期待されています。ユーザーも遠慮なくサポートを受けられる可能性があります。現実空間で行動するAIを目の当たりにする日も近いでしょう。
1 リアルな作用点がそこにある
しばしば話題になる生成AIと異なり、リアルな世界の中で起きていることを理解し、必要な行動をとるAIには、さまざまな課題への解決を期待します。しかし、AIが状況を理解する道筋はどうでしょうか。そこからスタートしなければ行動の根拠がわかりにくくなります。行動には必ず作用点があります。ヒューマノイドロボットがわかりやすいですが、役に立つにはどうしたら良いかは人間が考えます。誰の何に対して働きかけることが役に立つかという視点です。
これまで自動運転技術があったとしても、部分的であるために中途半端なものが多くありました。利用できる状況を人間が用意しなければならないものもありました。もちろん、安全面での配慮から制限も必要です。これからうまく統合されることを期待しています。忙しい時にロボットが洗濯物を畳むとしても、それをタンスにしまってくれなければ満足できません。名もなき家事を黙ってこなしてくれるでしょうか。
AIが私たちの暮らしをどう見つめて、どう関わるかを考える時代になりそうです。医療も福祉も暮らしの中に入り、私たちの自立性が求められる時期が到来です。人口構成や労働衛生の課題が背景にありますが、健康に関する「手当て」は、暮らしの中にある根源的な行為です。フィジカルAIの働きをもっと暮らしに反映してほしいと期待しています。
ただし人間の本質を理解しておく必要があります。役に立つのはどんな時か、どんな気持ちか。名もなき家事もフィジカルAIに教えなければなりません。
2 社会的に受容される
空港には自動運転の車椅子が置かれています。今までも巨大な空港には運転手付きサービスカーが用意されていることがありましたが、自動運転技術の活用によりもっと個人的に対応できるようなものになりました。現実社会の中で、ロボットが私たちの暮らしを支えるシーンが増えています。
かなり前に自動搬送ロボットを病院で運用することが検討されました。患者さんの安全性はどうか、邪魔にならないかといった疑問がぶつけられ、院内で自動搬送ロボットが活用されることはありませんでした。今はホテルで掃除をするロボットやファミリーレストランで配膳をするロボットがいます。また、警備ロボットがイベント会場を巡回しています。公共空間でロボットが移動してサービスを行うことに違和感を持つことは減りました。自動搬送ロボットが病院の中で活躍することが増えるでしょう。技術の発達により地面上のレールなどを頼りにせず、ロボットの目で状況を判断することが可能になったのは大きいと思います。大事なのはロボットを社会的に受容することです。先日、空港で見た自動運転の車椅子は、静かに乗客を乗せてゲートに送り届け、自力で配置ステーションまで行き交う人の間をゆっくりと戻って行きました。
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