【第20回】デジタルヘルスで切り拓く未来
「プレシジョンメディスンに寄与するデジタルヘルス」
●要旨
プレシジョンメディスン(精緻医療)に関連するデジタルヘルスは今後ますます増えていくでしょう。医療従事者を支援し、それぞれの患者さんの医療と暮らしに寄り添います。医療の効率化が必須である今、欠かせませんが、セキュリティやプライバシーにも十分な配慮が必要です。情報の確からしさについても目を配らなければなりません。標準治療の受け入れ方も変わるなか、プレシジョンの方向性に注目しましょう。2025年は万博が開催され、注目の一年となるでしょう。
●はじめに 精緻な寄り添いの時代へ
先制医療、予防医療、オーダーメイド医療、などの言葉は2000年代に登場し、様々な研究開発の取組みの旗印になっていました。そのころは扱えるデータのサイズに限りがありましたし、人工知能が一般化していませんでした。今では、私たちの手にも人工知能によるアシストが存在しています。例えば、スマートデバイスを通じてタイムリーにメッセージが届き、エクササイズをするように励ましてくれるでしょう。そして人工知能に尋ねればいろんなことを教えてくれますし、まとめも作ってくれます。どんどん効率化していますが、あなたに合わせて精緻な寄り添い方を目指しています。医療従事者にとっても精緻な寄り添いはとても大事で、労働衛生や安全性の向上につながります。プレシジョンメディスンは大事な仕組みになりました。
<図表> プレシジョンとは
1 オーダーメイドだけでなく精緻であること
あなたに合わせるという意味では、オーダーメイド医療も近いといえますが、データを駆使して精度を上げていることが、以前と異なります。先日、筆者は入院して手術を受けたのですが、そこに至るまでのプロセスがまさにプレシジョンでした。体質に合う治療を選ぶためには、精緻な分析が必要です。そのためのSaMD(Software as Medical Device)を利用しました。なかなかにお高いシステムですが、条件が合致したので保険適用にて検査を受けることができただけでなく、事前カウンセリングも受けることができました。遺伝子検査はデリケートな面を持っています。その結果によって何が起きる可能性があるか、また、検査の限界は何かということを専門の職員、主治医、担当看護師から説明を聞いてから、自分で意思決定をします。筆者は、職務やサイエンスコミュニケーションの勉強の中で遺伝子カウンセリングに触れていましたが、自分ごととなるとなかなかに勇気のいることでした。しかし、自分の身体を精緻に知る大事な機会で、後の治療方針に対して重要なステップであることもよくわかっていましたので受けることにしました。
自分に合わせるということは、良くも悪くも知りたいこと、知りたくないことや知られたくないことと向き合うことです。データドリブンの医療において、プライバシーやセキュリティに対して慎重な態度を求められるのが理解できますね。このような検査はこれから増えるでしょう。例えば、OncoGuideTM NCCオンコパネルシステムについては、国立がん研究センターで開発され、日本のがん治療における治療方針策定のための大事な参考です。腫瘍以外にもこの動きは広がっていくでしょう。
医療の効率化として、クリニカルパスの提示など、患者さんのジャーニーに合わせた医療のプロセスの全体的な効率化と同時に、個別に精緻に合わせるプレシジョンは進んでいきます。
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