ゼロベースからの化粧品の品質管理【第52回】
―製造所として製品に関して確保してくべき書類について―
化粧品製造所におけるGMP(適正製造規範)体制の整備についてお話するとともに、OEM先や自社の内部監査を行う立場から、品質事故を防止するための重要なチェックポイントについてもご紹介しています。
今回は、製品運営に関わる文書管理、特に製品に関する必要な情報の文書化について考えてみたいと思います。
かつて薬事法では、製造所ごとに製品仕様書を作成し、対外的な対応を行っていました。しかし最近では、製品仕様書の作成が疎かになっている企業も見受けられます。一部では、化粧品に関しては出荷前検査表のみ、医薬部外品では届出書のみが製品関連書類として扱われるケースもあります。
本来、アジア、EU、米国などで製品を販売する際には、問い合わせがあった場合に迅速に対応できるよう、製品に関する情報を文書として整理し、各販売拠点で保管しておくことが必要です。しかし、こうした認識が十分に浸透していない企業もあり、最近もいくつかの問い合わせを受けました。
現在、OEM生産を活用したビジネスが広がり、製品そのものの評価に重点を置く傾向があります。しかし、化粧品における製品仕様書は、品質・安全性・効能を保証するために不可欠な文書です。適切な仕様書を作成することで、製造、試験、流通の各段階でのトラブルを防ぎ、規制当局からの信頼を得ることができます。
さらに、製品仕様書は動的な文書として、製品ライフサイクルに応じて更新が必要です。これにより、規制変更や新たな科学的知見に対応し、長期にわたって製品の品質と安全性を保証することが可能になります。
1.化粧品製造所における製品仕様書作成の目的
製品仕様書は単なる文書ではなく、品質保証の基盤であり、規制遵守や標準化の要として重要な役割を果たします。適切に作成・管理することで、企業の信頼性向上や長期的な製品品質の維持に寄与します。
製品仕様書は、外部の査察対応や製品説明において重要な文書であると同時に、社内で製品情報を整理するための有用なツールでもあります。この文書には、製品特性、製造工程、試験方法に関する具体的情報が含まれ、適切な管理が求められます。以下に、製品仕様書に記載すべき主な項目と、それぞれの留意点を説明します。
製品仕様書は単なる文書ではなく、品質保証の基盤であり、規制遵守や標準化の要として重要な役割を果たします。適切に作成・管理することで、企業の信頼性向上や長期的な製品品質の維持に寄与します。
製品仕様書は、外部の査察対応や製品説明において重要な文書であると同時に、社内で製品情報を整理するための有用なツールでもあります。この文書には、製品特性、製造工程、試験方法に関する具体的情報が含まれ、適切な管理が求められます。以下に、製品仕様書に記載すべき主な項目と、それぞれの留意点を説明します。
① 製品概要
a)製品名:商品名と薬事届出名を記載します。可能であれば“化粧品分類(美類)”も記載が望ましいです。製品名が同一でも管理方法が異なる場合があるため、明確化が必要です。物流や店頭での取り扱いが同じ製品名称の場合もあり、管理方法を含めて明確にしておく必要があります。
例えば、製品でマイナーな変更の場合には、薬事名称の変更が行われたとしても、店頭では同じ製品名に見えるように扱われることがあります。処方変更や外装仕様の変更が発生した際には、変更履歴がわかるように製品の識別を行うことが基本ですが、それに対応して製品仕様書を変更毎に書類化し細分化すると製品としての履歴の追跡が難しくなるため、工夫が必要です。
例えば、製品でマイナーな変更の場合には、薬事名称の変更が行われたとしても、店頭では同じ製品名に見えるように扱われることがあります。処方変更や外装仕様の変更が発生した際には、変更履歴がわかるように製品の識別を行うことが基本ですが、それに対応して製品仕様書を変更毎に書類化し細分化すると製品としての履歴の追跡が難しくなるため、工夫が必要です。
b)剤形:製品の形状(例:澄明液体、白色クリームなど)を具体的に記載します。
c)包装形態:製品の包装仕様を記載します。現品、リフィル、容量違いなど、全体の仕様を一覧表にまとめ、詳細は別紙で補足することが望ましいです。
d)用途および使用方法:製品の使用目的や使用方法を簡潔に記載します。美容読本の原稿などの詳細情報は別紙で補足します。
② 製品の品質特性
a)処方および医薬部外品における薬剤含量:製品の成分名称と含有量を明記します。医薬部外品の場合、許可された含有量規格も記載します。
b)不純物に関する規格:ヒ素や重金属を含む不純物の種類と許容範囲を記載します。界面活性剤のキャリーオーバー成分(例:メタノール)についても可能な限り記載します。但し、配合禁止成分でキャリーオーバーの可能性がある成分に関しては、製品としての不純物の水準として明確にすべきであると考えますが、製品規格の中で盛り込まれているケースは今まで目にしたことはありません。
c)物理化学的特性:pH、粘度、密度(比重)などの物性値を記載します。本来ならば、口紅等では融点や軟化点を明確にすべきであると考えます。あまり活用されているケースは目にしませんが、これらの注意事項につながる特性は、物流や販売部門とのコミュニケーションの上では重要な情報になります。
d)安定性:製品の有効期限、保管条件、過酷試験や加速試験の結果を記載し、量産化後に更新します。冷暗所保存、若しくは室温保存、3年間と機械的に記すだけではなく、開発段階での過酷試験や加速試験の情報を記載しておくことが重要です。また、量産化が進んだ状態では安定性の結果を盛り込み、更新しておくことが管理体制面では有効です。
留意点
● 仮規格はラボや量産前テスト結果をもとに設定し、量産後に正式規格を確定します。
● 初期値と経時後の安定値を分けて管理し、顧客視点の規格値と社内管理用規格値を区別します。
● 官能評価も重要で、訴求効果(例:マスカラのボリューム感)を再現性ある方法で確認する必要があります。商品の訴求効果でボリューム感を出すマスカラとするならば、ボリューム感が出ているのかの確認は重要です。樹脂、ファイバー量、粘度や硬度が適切ならばOKとすることも考えられますが、やはり訴求効果のボリューム感について評価方法を明確にする必要があると考えます。
③ 試験方法
製品が規格に適合していることを確認するため以下の試験方法を記載します。薬剤の定量方法だけに着目しがちですが、製品の訴求効果についても客観的に評価することが必要です。その場合には、再現性の高い試験方法を定めます。ネールエナメルの速乾性を訴求していた製品では、ガーゼに包んだ十円玉が指摘の時間で縞模様がつかないことを指標にしたことがありました。溶剤組成で乾きの速度はほぼ決まりますが、中味の粘度によっても変わりますので、お客さま視点で客観的に評価することが重要であると考え指定しました。
a)試験項目:例えば、外観、pH、粘度のような直接的な物性と折れ強度等の消費者の立場の保証項目、微生物試験など、製品の品質を保証するために必要な試験項目を総合的にリスト化します。可能ならばJP、USP、EP等の国際的に認められている試験方法に準拠することが好ましいと考えます。
b)試験手順:温度条件など、再現性確保のための詳細な手順を記載します。標準操作手順書(SOP)と整合性を確保し、バリデーションを実施します。実際に試験している方法と異なった理想的な方法で標準操作手順書(SOP)が定められているケースがありますが、実際に試験する手順との整合性を確保することが必須です。試験手順はバリデーションを実施し、定める試験方法が適切であることを確認することが重要です。
c)使用機器:分析装置や測定器の種類を明記します。
d)基準値:満たすべき基準値を記載します。
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