CMS:4.0 ワイヤレス技術と統合遠隔モニタリングがもたらす、医薬・ライフサイエンスの現場の未来
記事投稿:ヴァイサラ株式会社【PR記事】 (2026.9.10 更新)
CMS:4.0
ワイヤレス技術と統合遠隔モニタリングがもたらす、医薬・ライフサイエンスの現場の未来
著者は、2012年にヴァイサラ株式会社へ入社する以前から、医薬品分野を中心に医療機器・バイオなどライフサイエンス関連分野に25年間携わってきました。GxP規制コンサルタントとして環境モニタリングシステム(CMS:Continuous Monitoring System)の導入現場に立ち会う中、ここ10年の技術進化を強く実感しています。
医薬・ライフサイエンス業界もいま、大きな変化の中にあります。高齢化に伴う医薬品需要の増加に加え、バイオ医薬品や個別化医療など新しい治療技術の開発が加速し、デジタル化やAIの活用も急速に進んでいます。
本稿では、2026年5月にCM Plus社様と合同開催したウェビナー「CMS 4.0 ワイヤレス技術、統合遠隔モニタリングの最新動向」の内容をもとに、環境モニタリングシステムの現在地と今後の展望をお伝えします。
「線がない=ワイヤフリー」と「本質が変わる=ワイヤレス」は違う
黒電話からガラケー、そしてスマートフォンへ。この変遷を思い浮かべてください。黒電話の時代は、電話のある場所まで行かなければ用が足せませんでした。ガラケーになると線がなくなり、どこでも電話ができるようになりました。しかしスマートフォンの登場は、単に線がなくなっただけでなく、アプリケーションを通じて生活そのものを変えてしまいました。
環境モニタリングシステムにも、同じ構図が当てはまります。単にケーブルをなくすことを「ワイヤフリー」、業務のあり方そのものを本質的に変えることを「ワイヤレス」と、私たちは区別しています。無線化そのものはゴールではなく、現場の業務負担を軽減し、仕事の未来を変えるための手段です。
もう一つ重要な視点は、無線技術だけではワイヤレスは本質的に機能しないということです。家に例えるなら、基礎・構造・設備・外装・内装・保守のすべてが揃って初めて安定します。無線を「基礎」とするなら、その上にアプリケーションソフト、デバイス、ドキュメント、バリデーション、保守・サポートが必要です。ヴァイサラのviewLincは、後から規制対応を付け足すのではなく、設計段階からGxP環境を前提とした専用設計としている点も大きな特徴のひとつです。

図1 技術の世代交代:黒電話からガラケー、スマートフォンへ
市場の潮流:バイオ医薬品とCDMOの活用
医薬・ライフサイエンス市場では、希少疾病・難病に対してバイオテクノロジーの力でより多くの患者さんを救うことが大きなテーマになっています。従来の低分子医薬品が2034年度まで年率5〜6%程度の成長にとどまる一方、バイオ医薬品は8.2〜8.6%程度の成長が見込まれています。COVID-19の影響で一時的に停滞した時期を経て、当該市場は再び活発化しています。
日本は抗体医薬の分野で、開発を支えるCDMO(受託開発製造機関)の活用が十分に進まなかった歴史があります。今後はCDMOの活用によってバイオ医薬品開発を加速させることが期待されています。バイオ医薬品の普及とは、温度にクリティカルな製品が増えることです。すなわち、温度やCO2を含む環境管理の重要性は高まり、長期間、安心して運用できる管理システムが不可欠となります。

図2 バイオ医薬品市場の成長(出典:経済産業省)
環境モニタリングシステムの役割:単なる計測からソリューションへ
環境モニタリングシステム(CMS)の役割は、単純に温度や湿度を測ることではありません。温度、湿度、差圧、CO2、場合によってはパーティクルカウンターまでをリアルタイムで計測、監視し、現場の業務負担を軽減するソリューションとして展開することが重要です。PCやスマートフォンからどこでも状況を確認でき、この先に起こることをシミュレーションできる環境を整えることが、あるべき未来の姿だと言えます。
例えば自動レポーティング機能を活用すれば、環境監視にかかるリソースを抑えながら管理できます。こうした記録方式は、手書き、紙記録計、紙レス記録計、有線データロガー、無線データロガーへと変化してきました。この進化には国や市場に根づいた文化の違いが大きく影響しており、日本では無線化はまだ主流とは言えませんが、今後さらに広がっていくと考えています。
新工場の建設や設備改修において、工期とコストはどのお客様でも必ず課題になります。有線システムは工事期間が長くなりがちであるため無線システムに利点がありますが、通信の安定性への不安も議論されます。無線通信技術の導入に際し、この点をどう解消するか。それは医薬・ライフサイエンスの進化において隠れた重要な鍵とも言えます。

図3 記録方式の変遷:アナログからデジタルへ
VaiNet:LoRaを基礎とした独自のワイヤレス通信技術
事例として、ヴァイサラの最新ワイヤレス技術に触れます。品質管理エリアや倉庫、製造エリアは、間仕切りや金属ラックが多く、電波の安定性を確保する上で不利な環境です。そこで弊社は、LPWA(Low Power Wide Area)の考え方に基づくLoRaを基礎技術として選定し、GxP対応のデータ暗号化・圧縮技術を組み合わせた独自の通信プロトコル「VaiNet」を開発しました。920MHzを用い、見通しでは半径約100m、間仕切りのある環境でも実績ベースで60〜70m程度の通信距離を確保できます。

図4 VaiNetとWi-Fiの無線電波特性の比較
この技術を活用したviewLincワイヤレスCMSは、データロガー・アクセスポイント・アプリケーションソフトウェアというシンプルな3アイテム構成です。アクセスポイントとデータロガーが直接通信するスター型構成を採用しており、構成がシンプルな分、トラブルシューティングも容易です。データロガー側には30日分のメモリーを持たせ、インフラ障害時も自律計測を継続し、復旧後は自動でバックフィルされる冗長性を備えています。

図5 viewLincワイヤレスCMSのハードウェア構成概要
スマートプローブと多様なパラメータ計測
センサー交換の容易さも、現場の負担軽減に直結します。viewLincワイヤレスCMSのスマートプローブは、計測した時点でデータがデジタル化されており、工具を使わずにプローブのみを交換できます。交換時にはモデルとシリアル番号をシステム側が自動認識し、監査証跡にも記録されるため、校正時や故障時の交換に伴うヒューマンエラーを抑制できます。温度センサーはマイナス196度からプラス90度までの広いレンジをカバーでき、250度や600度に達する領域では有線データロガーとのハイブリッド構成で対応します。
今後は細胞培養の普及に伴い、CO2計測の重要性も増していくと考えています。ヴァイサラはMEMS技術「Microgrow」を用いることで、長期安定性に優れ発熱しにくいCO2センサーを実現しています。温度・湿度・差圧・CO2、場合によってはパーティクルカウンターまでを一つのシステムでリアルタイムに接続・監視できることが、現場のソリューションとしての価値をさらに高めています。
GxPにおけるCMSの役割
ビル管理システム(BMS)が「制御」のためのシステムであるのに対し、CMSは「モニタリング・アラーム・レポーティング」に特化したシステムです。GMPの3原則――人による間違いを最小限にすること、医薬品の汚染や品質低下を防止すること、より高度な品質を保証する仕組みを設計すること――を支えることが、CMSの役割であり、この点でBMSは本質的に異なります。
記録の信頼性、GMPの原則、そしてお客様のタスク達成を支える。それがGxPにおけるCMSの役割であり、DX化とシステム活用によってお客様の時間を削減し、別の重要な仕事にご注力いただける環境を構築することが重要です。

図6 ビル管理システム(BMS)と環境モニタリングシステム(CMS)の役割の違い
SaaSへ、そして次の4年へ
2030年度までを見据えると、SaaSの活用が重要なキーワードになります。クラウド化が進んだ現在の日本市場では、物理サーバを新規に納入する機会はほとんどなくなりました。統合されたグローバルサーバに複数拠点のデータを集約しながら、部署ごとの閲覧権限はアプリケーション内でパーティション管理することで、拡張性と情報セキュリティを両立できます。
CMS:4.0とは、最新の無線モニタリング技術とこれからのSaaSの潮流を組み合わせ、GxPに携わるお客様に有用な情報と仕組みを提供していく考え方です。従来は試験室、製造、倉庫がそれぞれ独自にメーカーと打ち合わせを行い、個別のシステムを導入するのが一般的でした。これからは、こうした個別最適のシステムを統合し、コストと運用負担の両方を下げていくことが可能になります。
お客様ごとに抱える課題は一社一社異なります。製品の力だけでなく、GxPの専門知識や導入・運用・保守を通じた「人の力」を掛け合わせ、トータルソリューションとしてお客様の未来をともに支えていきたいと考えています。

図7 通信方式と記録設備の変遷から見るCMSの世代交代
ご執筆者様のご紹介
ヴァイサラ株式会社
産業計測事業本部 GxPレギュラトリーエキスパート
魚路 康幸
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(ライフサイエンス企業向け情報プラットフォーム iVEXLへリンクします)
本件に関するご連絡先

ヴァイサラ株式会社
URL:https://www.vaisala.com/ja
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