最新コスメ科学 解体新書【第30回】

コスメ業界研究③ 化粧品テクノロジーの歴史 その1


 わたしたちが日常的に使っている化粧品は、一見するとシンプルな美容アイテムに見えるかもしれません。しかしその背景には、何十年にもわたる科学者たちの研究と、目覚ましいテクノロジーの進歩が隠されています。 

  化粧品には、私たちの身体を清潔にし、皮膚や髪の健康を保ち、見た目を美しく整えるという大切な役割があります。これを支えるために、皮膚科学や化学、物理学といったさまざまな技術革新が積み重ねられてきました。1980年代から現在に至るまで、化粧品の技術はどのように進化し、私たちの生活や美しさを変えてきたのでしょうか。その歩みを紐解いてみましょう。

  化粧品に求められる重要な基本要素として、最も優先されるのは「安全性」と「品質」です。どんなに素晴らしい効果があるように見える商品でも、皮膚トラブルを引き起こしたり、使っているうちに品質が変わってしまったりするものは商品として世に出すことができません。また、近年ではSDGs(持続可能な開発目標)への貢献や適切なコストも不可欠な要素となっています。  これらの「基礎的要件」を満たした上で、技術開発の主戦場となってきたのが「物理・化学・生理機能」です。これは、皮膚を清潔に、健康に、そして美しくする直接的な機能のことです。さらに2000年代以降は、これらの効果を実感できる「感性機能」が重視されるようになりました。「塗った瞬間に心地よい」「肌がしっとり整ったと感じる」などの使用感や感情的な満足感があって初めて、人は化粧品を継続して使い続けることができ、ヒット商品が生まれるのです。  

 1980年代に、最も注目されたのが界面化学という分野でした。本来、水と油は混ざり合いません。しかし、クリームや乳液、リキッドファンデーションなどは、水と油を綺麗に混ぜ合わせる必要があります。この水と油を結びつける技術を乳化と呼びます。1980年代のはじめに、油の中に水を徐々に加え、乳化プロセスの途中で連続相を油相から水相にひっくり返すことで、細かく均一な油の油滴を水の中に分散させる「転相乳化」という技術が開発されました [1]。これにより、皮膚上でなめらかに伸び、長期間品質が安定するスキンケアクリームやリキッドファンデーションを作ることが可能になり、現代の化粧品処方のスタンダードが築かれました。 

 続いて登場したのがαゲル乳化という技術です。これは、界面活性剤と高級アルコールが整然と並んだαゲルを作ることで、大量の水を含んだまま構造を安定させる技術です。この技術の誕生によって、水々しい感触のヘアコンディショナーや、うるおいをたっぷり保持できる高含水ジェル・クリームの開発が一気に進みました [2、3]。

 

 

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