AIとは──製薬企業に求められる“AI活用人材”と、人が成長する未来【第5回】
AI × サプライチェーン──データを重ね合わせて複雑なSCを読み解く―
多くの製薬企業において、サプライチェーン管理はすでに「限界」に近づいています。Excelで管理されたサプライヤーリストは更新が追いつかず、過去に実施したリスク評価は形骸化し、監査は“実施すること”自体が目的になってしまっている──こうした状況に心当たりのある方も少なくないのではないでしょうか。
実際の現場では、製造委託先(CMO/CDMO)だけでなく、試験に使用する試薬メーカー、分析機器ベンダー、包装資材業者、さらには部品供給業者に至るまで、数百社規模のベンダーを管理しているケースも珍しくありません。これらすべてに対してリスク評価を行い、監査の要否を判断し、定期的に見直しをかけ続ける──この業務を人手だけで維持することは、すでに現実的ではなくなりつつあります。
さらに近年は、サプライチェーンの複雑化に加えて、地政学リスクや経済安全保障の影響が顕在化しています。抗生物質などの重要医薬品では、原薬供給の特定地域依存が長年の課題とされ、各国当局は供給源の多様化や国内回帰を促す方針を打ち出してきました。完全な構造転換には至っていないものの、「依存そのものがリスクである」という認識は業界全体に広がっています。
また、医薬品製造や品質管理に使用される試薬・溶媒についても、他産業の影響を受ける供給逼迫が報告されています。さらに、中東情勢や資源価格の変動が石油化学製品に影響し、包装資材や製造関連資材へ波及する可能性も指摘されています。これらは医薬品そのものではないにもかかわらず、結果として供給全体に影響を及ぼします。
つまり、医薬品サプライチェーンは「原薬」だけでなく、「試薬」「溶媒」「包装資材」「設備部品」など、多層的な要素に依存しており、そのどこか一つの変化が全体リスクへと波及する構造になっています。
このような複雑で外部依存性の高いサプライチェーンを、分散した文書と属人的な判断に依存して管理し続けることは、もはや限界があります。数百社に及ぶベンダー情報を横断的に把握し、変化を追い続け、リスクを評価し続けることは、人手ではほぼ不可能です。
ここに、AI活用の必然性があります。
AIを活用すれば、バラバラに存在していた原材料仕様書、サプライヤー監査報告、品質情報、不具合レポート、契約書、変更管理資料など、サプライチェーンに関わる膨大な情報を横断的につなぎ合わせることで、
- 共通するリスクパターンの抽出
- 過去トラブルの兆候可視化
- サプライヤーごとのリスク傾向分析
- 変更管理との整合性チェック
などの自動化が期待できます。
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