医薬品モノづくり現場の履歴書【第2回】
本連載は、製薬企業での工場長経験者より、次世代を担う皆さんに贈る「生きた教科書」を目指します。マニュアルや計算式だけでは語れない現場のリアルな教訓をお伝えするため、経験談をベースに、関係者や特定ケースが分からないよう創作を交えた「読み物」としてお届けします。
また、本連載は異なるキャリアと専門性を持つ2人の元・工場長による二つのストーリーを交互に掲載します。
(1)『失敗から学ぶ現場学』(執筆者:南都下 史朗)
(2)『モノづくり人生の哲学』(執筆者:モノづくり伝道師)
アプローチは異なりますが、2人に共通するのは、モノづくり現場への「深い愛」と、プレッシャーの中で奮闘する皆さんへの「熱いエール」です。
この記事を読んだ後、隣のメンバーや、グループ内で意見交換するなど、コミュニケーションのツールとして利用いただけると嬉しく思います。
今回は『モノづくり人生の哲学』のスタートです。
「モノづくり」人生の哲学
第1回:「モノづくり」人生の幕開け
「医薬品モノづくり現場」の履歴書の第二回は‶モノづくり伝道師″の私から「モノづくり人生の哲学」と題して、これまで医薬品の製造現場やサプライチェーン(SCM)を長く経験してきたことを踏まえて、医薬品の「モノづくり」について学んだこと、大切に思ったことなど履歴書風にお伝えし、今、「モノづくり」の現場で活躍されている皆様の何か参考になれば幸いです。
まず「モノづくり人生の哲学(第1回)」は、「「モノづくり」人生の幕開け」と題して、国内製薬企業の研究所に入社した私が製造部門に足を踏み入れるまでに経験したことをお話しします。
【「モノづくり」人生の幕開け】
医薬品の製造、つまり「モノづくり」に携わるそもそものきっかけは、サラリーマン人生のスタートが製剤研究に携わったことに始まったと思います。
当時の製剤研究は、一つの新薬候補についてプレフォーミュレーションや処方設計だけでなく、規格及び試験方法の設定、申請対応、工業化研究(スケールアップ)まで、何から何まで一人で担当しなければならない時代で、時間との戦いに明け暮れていたように思います。その割には、新薬候補が順調に最後の申請まで行ければ良い方で、当時でも開発候補品の成功確率は1万分の1程度(今では数万分の1)で、一生懸命研究したにも関わらず、努力の結果が報われないことは日常茶飯事でした。
そのような中で、担当した研究テーマの中に既存品の剤型追加の検討がありました。
市場には既に発売されていました錠剤に加えて、散・細粒剤を新たに出せないか営業部門からの要望を受けて、特性開発の検討をすることになりました。製剤化研究は、市場に散・細粒剤を出すことが最優先ですが、既存品の剤型追加と言うこともあって、出来るだけ工場の既存設備で製造可能な処方及び製造方法に配慮することも大事でした。数多くの処方検討、安定性評価、そしてスケールアップと粉まみれになりながら、限られた時間の中で試作検討を繰り返し、最終的に処方と製造方法を確立し、いよいよ工業化研究へと進みます。
工業化研究とは、実際に工場の実機を用いて、通常の1/2~1/3スケールで試作検討し、設計通りの品質の製品が得られることを確認することです。同時に、工場での商用生産が安定的にできるか工場関係者の評価を受ける実験でもあり、少しでも気になる点があると関係者から集中砲火を受けて、場合によっては検討のやり直し判断を仰ぐことがあります。そもそも、工場への出張実験ですので、少人数の我々と工場関係者との「多勢に無勢」の状況にあるため、実験結果が60点程度の合格点ギリギリでも、分が悪い関係にあります。若手研究者にとっては成長するために避けて通れない険しい道だったように思います。
とは言え、何とか実機で設計通りの製品ができることを確認した矢先に、新たに工場敷地内にできる部署への転勤を命ぜられ異動になりました。
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