再生医療等製品の品質保証についての雑感【第85回】

第85回:細胞製造の品質マネジメントシステム (15) 
~ 逸脱をアクティブに活用できる是正・予防(CAPA)システムの構築 (1) ~


はじめに
 品質マネジメントシステム構築の考え方として、前回、構造設備設計に関わる管理戦略とモニタリングについてお話しし、そこでモニタリングは、「いつも通り」を評価できることが重要であると記しました。いつも通りを評価できることはシステムの維持・改善活動において不可欠な要素であり、いつも通りとならなかった事例、「逸脱」を有意義に活用できる前提であると考えます。


● 「逸脱」は嫌ってはいけない
 逸脱は、製造の実施者において、悪いイメージがあるかもしれません。理由としては、逸脱が発生すれば、現場としては、発生を提出し、処理を実施、原因を解析し、解析結果を報告し、再発防止策を提示すると、ルーティーンの活動に余計な仕事が付加されるからです。他方、製造管理者の立場としては、逸脱はシステム改善のための有用な資源であり、その解析と理解は品質マネジメントシステムの質向上に大きく寄与します。したがって製造管理者は、逸脱を歓迎することがあっても、否定してはいけないのです。製造管理者が否定すると、作業者は逸脱をより忌避するようになり、システム成熟に資する機会を損失することにとどまらず、逸脱隠しなどの違反発生リスクの懸念が生じます。

 そもそも逸脱は「不適合」ではありません。不適合は、製造の失敗であり、製造物の出荷ができなくなるので、製造者が最も生じさせてはいけないものです。対して、逸脱は必ずしも不適合ではありません。
逸脱の定義は、「通常実施される作業からの乖離」であり、その程度に関わらず、予め定められた規格から外れることからいつもと違うことまで、全て逸脱なのです。品質マネジメントでは、逸脱に限らず、「プロセス」など、大枠から小枠まで同じ用語を使用することが多く、異なる階層で分類するイメージを持って管理戦略を推進することが肝要となります。
例えば、医薬品製造における規格外(OOS)試験結果の調査に関する業界向けガイダンスでは、規格外を示すOOS(Out of Specification)、すなわち不適合、の調査について解説を行っていますが、その主旨は、規格外そのものをマネジメントすることではないということです。起こってしまった重大事象であるOOSの処理は再発防止であり、改善(CAPA)に関する管理戦略とは異なりますが、実質的に改善活動が求められています。

 そのため本ガイダンスでは、具体的に、OOS結果の適切な調査のため、日常(トレンド)における、科学的根拠に基づく原料試験、インプロセスモニタリング、出荷と安定性試験、プロセスバリデーションで得られたすべて情報でマネジメントする管理戦略が必要であることを記していると認識します。(ガイダンス脚注にも「本文書の主題はOOSであるが、ガイダンスのかなりの部分は、アウトオブトレンド試験結果の検討にも役立つ。」と記されています。当該試験がリーズナブルかの議論はしませんが、管理戦略の方向性として留意すべき点です。)

 

 

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