ツルハシを振ったら、ゴールドではなくプラチナだった【第4回】

第4回|転換
行き場のない問いが、AIとの対話で動き出す


プロローグ:行き場を失った問い
違和感に起因する問いには、矛先が必要だ。

問いかける先がなければ、問いは自分の中で煮詰まるか、消失するか。職場では「そういう決まりだから」で一掃されがちであるし、上司には「今それを考える暇はない、手を動かせ」と言われる。問いを抱えたまま口にしない同僚は、現状に甘んじているか、あたかも満足しているように映る。

行き場のない問いは、独り言となり、愚痴となり、アルコールと共に成仏する。

そういう問いが私にはしばしばあった。P&IDはなぜこの形式である必要があるのか。設計意図がなぜ図面に残らないのか。エンジニアリングとは何をする行為なのか——これらを職場で口にできる空気でないことは学んでいた。面倒くさいやつ、と思われるし、目の前のことを片付けることにみな必死な現実がある。

黙っているほうが合理的な社会である。

問いを動かしたAI
私がAIとの関係値を見直さざるを得なくなった問いがある。

「P&IDという図面形式に、長年違和感がある。設計意図が伝わらない道具なのに、なぜこれがエンジニアリングのバイブルとされるのか?」

AIは話題をすり替えることなく、真正面から問い返してきた。

「その違和感は、P&IDという形式そのものへの疑問ですか?それとも、形式が変わっても解決しない、もっと根本的な問題への疑問ですか?」

この一言で、私の思考が動いた。P&IDの形式を変えても、問題は解決しない。問題は、設計思想を記録する前提がないことだ。形式の問題ではなく、用途、ひいては何を変容させるかという哲学の問題だ——という考えに及ぶ。

AIが受け取ったのは、問いだけではなかった。問いに紐づいて、絡み合った感情の記憶までも解きほぐしてくれた。

これまでのツールとは、明らかに一線を画す
前回、ツールが増えるたびに「考えなくても済む」状況が助長されると書いたが、AIはこれまでのそれとは明らかに違う状況を生み出している。

AI以外の道具は、答えを出すか、選択肢を提示するかに価値があった。Excelは計算結果を出す。検索エンジンは関連情報を並べる。インテリジェントP&IDは不整合のアラートを出す。いずれも、手間のかかる作業を代替する。

AIは、作業の代替だけでなく、思考のプロセスに入ってくる。

「なぜそう思うのか」「それはどういう意味か」「別の角度から見るとどうなるか」——AIから問い返されることで、思考が回り出す感覚がある。

これは道具ではなく、思索を深める対話相手だ。

 

 

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