バイオ医薬品分野における品質保証責任者の独り言【第4回】

第4回:社内の敵にならないQAが実践している、たった3つの行動

はじめに
「QAはまた止めに来た」
現場にそう思われた瞬間、どれほど正論を準備していても議論の勝負は半分決まる。相手の耳は閉じ、言葉は届かず、残るのは感情のしこりだけである。品質を守るために必要な指摘が、次の相談を遠ざける結果になれば、それは品質保証として本末転倒だ。
この構図が最も起きやすい舞台が文書レビューである。文書は「証拠」であり、「再現性」であり、「説明責任」そのものである。だからこそQAは口を出す。しかし現場から見れば、レビューコメントはしばしば「作業を増やす紙の攻撃」に映る。ここで関係がこじれると、現場は次第に学習する。「どうせ細かく言われるから最初から相談しない」「とりあえず形だけ整えて出す」「突っ込まれそうなところは書かない」。これは品質文化にとって最悪の方向である。
ではどうするのか。必要なのは制度改革ではなく、日々の振る舞いの転換である。敵にならないQAは、文書レビューにおいても驚くほどシンプルな3つの行動を徹底している。


1. 行動① 結論の前に「背景」を語る――“赤入れ”を品質に接続する
文書レビューで現場が最も腹を立てるのは、「何のためか分からない指摘」である。”てにをは”、インデント、表記ゆれ――それ自体は軽微であっても、理由が示されないと「重箱の隅をつついている」と受け取られる。
敵にならないQAは、まず前置きを入れる。
◆ 「この文書は監査・査察で“証拠”として見られる。第三者が読んで誤解しない状態にしたい。」
◆ 「ここは品質そのものではなく、説明責任と再現性の観点で整えたい。」
◆ 「指摘は“揚げ足取り”ではない。将来あなたを守るための保険である。」
同じ赤入れでも、背景があると意味が変わる。「読み手が誰か」「何を守るのか」「どのリスクを減らすのか」を先に置くことで、レビューは攻撃から支援に変わる。
 
<文書レビューで“背景を語る”ときのコツ>
1) 相手の目的(早く通したい)を否定しない
2) 第三者視点(査察官・監査・異動者)を持ち出す
3) 品質・安全に直結する箇所は“理由を短く断言”する
4) 軽微な体裁は「まとめて」「優先度を落として」扱う


2. 行動② “NO”だけで終わらせない――「どう書けば通るか」を提示する
文書レビューの地雷は、「ここがダメ」だけを並べることである。現場は修正をするが、なぜダメかが分からないまま直す。結果、別文書でも同じ間違いを繰り返す。レビュー工数は増え、敵意も増える。
敵にならないQAは、必ず「通る書き方」をセットで返す。言い換えれば、指摘ではなく提案を出す。

 

 

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