プレフィルドシリンジの製剤設計【第3回】
今回は、シリンジに使用される構成材料とその性質について概説する
本文で用いるシリンジの名称はPDAテクニカルレポート73(以下TR 73 と略す)1)に合わせて図1 の名称を用いる。また,TR 73 に記載のない、ノズル、キャップを追加して用いる。図1 に記載がないが使用する可能性があるものとして、ニードルとコーンを接着するための接着剤、バレル、プランジャーストッパー及びニードルに塗布されることのあるシリコンオイルがある。
図1 本文で用いるプレフィルドシリンジ部品名称

*「ノズル」及び「キャップ」については独自名称
PDA Technical Report No.73(TR 73),
“Prefilled Syringe User Requirements for Biotechnology Applications”, 2015.に沿った名称
1. バレル
日本語では注射筒と呼ばれている部分である。
古くからガラスが使用されていたが、1990 年代から日本を中心にプラスチックの製品が多く出てきている。
1.1 ガラスバレル
注射剤に用いるガラスの素材としては、ホウケイ酸ガラスが使われている。USP < 1660 >記載の主な成分は、SiO2 65 ~ 80%、B2O3 7 ~ 13%、微量金属としてNa2O、K2O、Al2O3 が記載されている。
ガラス素材は、古くからアンプル、バイアルとして使用されてきており、その点で薬物との反応性は低いと考えられている。しかし、成型直後のガラスの表面には多くのアルカリ成分が存在し、 溶出するため、酸による洗浄がほとんどのガラスで行われている。他に熱による表面処理(ファイアブラスト処理)、硫酸アンモニウム処理(別名:サルファー処理)、SiO2 コーティング処理等も行われている。
また、泡・筋の混入で破損しやすくなるため、バレルの製造では、厳密な製品管理が行われるようになってきている。
古くからガラスの生地管の製造時に、微量のヒ素を入れることで気泡が容易に抜けることがわかっている。しかし、ヒ素が含まれているままで液剤を保管すると、溶け出してくる。日本薬局方に、ヒ素の純度試験は規定されていないが、ガラスの製造工程及び受入試験で注意が必要である。
光に不安定な薬物に対しては、遮光ガラスが用いられるが、この遮光の局方規格が日本と欧米で異なっており、共用することができない、注意が必要である。
また、プラスチックに対するメリットとしては、耐熱性が高いので乾熱滅菌にかけることができる。このため、一つの工程で、滅菌処理、エンドトキシン処理の両方ができる。
ガラスの最大の欠点は、破損することである。高価な薬物、医療従事者を危険にさらす抗がん剤、振動がある救急車等での投与はリスクが大きいため、プラスチックを選択すべきと思うが、二次包装で充分な破損対策ができるのであれば、ガラスを採用することも選択肢の一つであると考える。
1.2 プラスチックバレル
プラスチックバレルに使用されているプラスチックの主な樹脂は、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーの環状ポリオレフィン樹脂である。
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