ハラール認証取得のケーススタディ【第1回】
第1回 ハラール認証取得のケーススタディ:いまる井川商店が挑んだ「世界に通用する工場」への道 日本国内工場篇
はじめに
本連載は、シーエムプラスとハラル・ジャパン協会による業務提携・コラボレーション企画です。ハラール認証取得やムスリムフレンドリー対応に取り組んだ企業様の事例を紹介し、認証取得の判断材料や、工場建設・国際展開のヒントを提供することを目的としています。
今回の記事では、国内水産加工業の代表的な成功事例として、いまる井川商店 井川社長に、ハラル・ジャパン協会コンサルタントの田上がお話を伺いました。
1.世界市場への気づきと挑戦の始まり
井川社長が「世界」を強く意識するようになったのは、2015年のミラノ万博の視察がきっかけでした。会場では、イタリア館よりも日本パビリオンが注目を集め、日本の食文化が世界的な関心を呼んでいることを肌で感じたといいます。
「寿司だけでなく、漬け魚や西京味噌漬けといった日本独自の魚文化にも可能性がある」——。
そう感じた井川社長は、国内販売中心だった従来の事業モデルから、輸出を視野に入れた経営へと舵を切りました。
2.ハラールとの出会いと可能性の発見
海外進出を検討する中で直面したのは、「工場の衛生基準」でした。老朽化した施設では輸出対応が難しく、改修だけでは国際的な衛生要求を満たせません。
そんな中、展示会で出会ったのが、ハラル・ジャパン協会でした。セミナーで知ったイスラム市場の巨大な可能性と、ハラールが国際的な「衛生・品質の証明」として評価されている現実に大きな衝撃を受けました。
「日本の品質とハラール対応を掛け合わせれば、世界で勝負できる」——そう確信した井川社長は、単なる輸出対応ではなく、“世界に認められる基準”を備えた新工場の建設こそが、次の成長につながると判断しました。
「弊社は大手メーカーとの取引を通じて、衛生・品質の管理体制を厳しく鍛えられていました。その基礎があるからこそ、調味料や酒精などを見直せば、ハラールにも対応できると思えたのです。」
ハラールとの出会いは、同社にとって単なる新市場の発見ではなく、“世界基準の工場づくり”へ踏み出す決定的な契機となりました。
3.旧工場の限界と「新工場建設」への決断
ハラール対応を具体的に検討する中で、井川社長は「改修では限界がある」と判断しました。旧工場では原料搬入や調理ラインが外部と接しており、衛生動線の確保が困難だったためです。
「どうせ建てるなら、次の世代にも誇れる“世界に通用する工場”をつくりたい」——その思いから、同社は農林水産省の輸出関連補助金を活用し、新工場建設に踏み切りました。
コメント
/
/
/
コメント