医薬品のモノづくりの歩み【第46回】
執筆者関連書籍「医薬品製造におけるモノづくりの原点と工場管理の実践」
BSCとKPIマネジメント(8)
工場の「モノづくり」のパフォーマンスレベルを評価するKPIの中で、今回は、主に生産性(コスト)を評価するKPIを紹介します。
生産性(コスト)を評価するKPIでは、標準原価と実際原価の比較による原価差異分析や棚卸資産など、製造原価を用いて直接的に金額で表したKPIが代表的なものとして挙げられますが、原価差異分析や棚卸資産のKPIは第31回 の連載記事の中で既に紹介していますので、ここでは生産性にフォーカスを当てたKPIを紹介します。(表1の赤枠)
更に、生産性は主に設備生産性と労働生産性がありますが、設備生産性は技術レベルの評価に用いられることが多いことから次回紹介することとし、今回は、労働生産性を評価するKPIについて、特に、製造と試験業務に直接携わる従業員の作業時間分析で得られる要員稼働率(直接作業時間比率、パフォーマンス度、多忙度)を紹介します。
表1 工場の「モノづくり」のパフォーマンスレベルを評価するKPI例

(1) 要員稼働率(直接作業時間比率:D)
直接作業時間比率(D)は、直接作業者の総実労働時間(直接作業時間と間接作業時間の合計)に占める直接作業時間の割合で表します。実労働時間には、残業時間や休日出勤など時間外労働時間を加えると共に、どの製品やロットのために行われたか明確な生産準備作業、終了作業や品目切替等の付帯作業時間は直接作業時間に含めます。
このKPIの値が高いほど、直接作業者が直接作業に従事する割合が多く、その要員の稼働率が高いと言えます。例えば、生産数量が多く、繁忙な状態には、このような傾向になります。一方、直接作業時間が一定の場合、この値が小さくなるほど間接業務に要する時間が増加し、その負担が大きいと言えます。その後、生産に要する直接時間が増加していく事が見込まれる場合、直接作業時間の確保に向けた間接業務の生産性を高め、負荷を軽減することが必要となります。但し、間接時間の中には、GMP教育や多能化などある程度の教育時間にも配慮する必要があります。筆者らが過去にこのKPIをベンチマークした結果、直接作業者において、ある程度必要な間接業務があることから、直接作業時間比率は平均75%でした。
(2) 要員稼働率(パフォーマンス度:PF)
製造や試験の直接作業ごとに設定されている標準作業時間(標準工数)に対して、実際に要した直接作業時間の比率から作業者のパフォーマンス度を評価します。
このKPIは、作業者が直接業務の習熟度を高め、標準作業時間以内で効率的に作業が進められるかを評価する指標で、通常は1.0を目指します。
ここで、直接作業とは、製造作業と製造に関わる準備、切替、清掃など付帯作業を含んだ作業のことを言います。試験作業では、検体や試験準備作業、試験記録作成も含みます。また、ここでの実績時間には、直接作業時間比率(D)同様、直接作業を行った時間外労働時間も含めます。
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