ゼロベースからの化粧品の品質管理【第60回】
―薬機法改訂2025年に対する化粧品製造で考慮すべき事項(No.2)―
前回は、2025年の薬機法改正に関する概要と、それに伴い改定された「特記表示」の取り扱いについて、製造所や事業者として構築すべき体制を中心にご説明しました。ただし、そこでは改正内容の「運用上の対応」に焦点を当てていたため、制度の根拠や法的要求の全体像を理解するには少し説明が不足していました。
そこで今回は、化粧品広告に関わる規制強化の背景や、特記表示に関する法的要求について説明すると共に、改正の意義や実務的な影響について補足して説明します。
1.2025年3月通知による新Q&A(医薬監麻発0310第3号)
この通知は、化粧品広告における成分表示や効能効果表現のあり方を整理し、消費者の誤認を防ぐことを目的として制定されました。
従来は昭和60年の通知(薬監第53号)を基に運用されていましたが、広告媒体の急速な多様化や表現の高度化に対応しきれなくなっていたため、新たにQ&A形式で再整理が行われたのです。
<通知名>
「化粧品における特定成分の特記表示について」
(厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課長通知、医薬監麻発0310第3号、令和7年3月10日)
今回の規制の改正の背景は、消費者の誤認を防ぎ、医薬品的な印象を与えないようにするための措置が主な目的です。
近年、広告の主戦場はテレビや雑誌からSNS・動画配信サービス・ECサイトへと移行し、従来想定されていなかった多様な表現が登場しています。その結果、旧ルールでは判断が困難なケースが増えていました。
「○○成分配合」「美肌成分」「エイジングケア成分」など、消費者に強い印象を与える訴求が増加しており、これらは、医薬品的な効能を暗示する表現として誤解されるリスクが顕在化していました。
化粧品はあくまで「人体に対する作用が緩和なもの」と定義されており、医薬品のような効果を標榜することは許されません。消費者が「薬効がある」と誤認して購入する事態を防止するため、規制の明確化が求められました。
<特記表示とは>
商品に配合されている成分中、特定の成分を強調して表示することを指します。
例:
「ヒアルロン酸配合」、「コラーゲン入り」、「○○エキス(美肌成分)」
このような表現は、一見すると単なる情報提供に思えますが、消費者に「その成分が有効成分であり、製品として薬理効果を持つ」と誤認させる危険があります。そのため、原則的には避けるべきものとされてきました。
<従来の運用と限界>
昭和60年の薬監第53号通知では、「訴求成分を特に目立たせる表示」が規制対象とされていました。しかし、広告媒体の多様化と成分訴求の巧妙化により、
●どこまでが「強調」に当たるのか
●すべての成分を均等に列挙した場合はどうか
といった判断が難しく、実務上の混乱が生じていました。
個人的な見解になりますが、骨格処方は共通で新規の成分を微量追加配合して、原料そのものの薬効効果があたかも製品として効能を有するように謳った商品が市場に見られますので、今回の改正については注意が必要と考えます。
<特記表示が認められる条件>
特定成分を表示する場合は、必ず配合目的を併記し、客観的に実証された内容である必要があります。また、記載方法としては、特定成分の配合目的を成分名の前または後に記載し、消費者が容易に理解できるようにする必要があります。
<広告表現における注意点および重要なポイント>
広告に特定成分が記載される場合、その表現が特記表示に該当するかどうかを確認することが必要です。但し、全ての成分を同等に表示する場合は、特記表示には該当しません。また、表示する際は、上記の記載方法により成分名と配合目的を明確にし、消費者が誤解しないようにすることが重要です
2.特記表示に関する変更点と注目ポイント
2.1. 医薬品等適正広告基準における記載
(1)特記成分について
前述の通り、化粧品では多くの商品で特記表示が行われています。
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