フェムテック新時代を読み解く【第1回】 ~女性のカラダとテクノロジー、 現場で知っておきたいこと~
女性の健康問題を社会課題に 経済産業省フェムテック実証事業が変える働き方とキャリア
フェムテックは、月経や妊娠・出産、更年期など、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する新たな潮流です。本連載では、経済産業省の補助事業を軸に、注目企業の取り組みや製品を紹介しながら、医療や製造の現場に求められる視点を読み解いていきます。
女性の健康課題は、職場におけるパフォーマンスやキャリア継続に密接に関係しているにもかかわらず、長らく“個人の問題”として扱われてきました。そのような現状を変えようと、経済産業省が令和3年度からスタートさせたのが「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」です。企業や自治体等と連携しながら、女性の健康を支えるフェムテックの社会実装を推進するこの取り組みは、少子高齢化が進む日本の構造的課題に切り込む試みとして注目されています。
初回となる本記事では、経済産業省の担当者への取材をもとに、この事業の特徴や成果、そして今後の展望を探っていきます。

実証事業を主導するのは、経済産業政策局の経済社会政策室です。その名の通り、制度整備による社会問題の解決に取り組む役割を担っています。なぜ経済産業省が女性の健康課題に取り組むのか。その背景には、企業等における役員や管理職等への女性登用が進まないことや、労働力維持の観点からの強い問題意識があります。
経済産業省の推計では、女性特有の健康課題(月経、妊娠・出産、更年期など)による労働損失等の経済損失は、年間約3.4兆円にのぼります。生産性の低下や離職などがその内訳です。
経済損失を減らす手段の一つとして期待されているのが、フェムテックです。経済産業省はこれを単なる福利厚生としてではなく、企業の中長期的な競争力強化とダイバーシティ経営の一環として位置づけています。
事業のターゲットである「働く女性」の中でも、特にキャリアの中断が起きやすい妊娠・出産期や、更年期による体調不良によって離職せざるを得ない女性への支援が重要視されています。
こうした支援の必要性は、就業データからも明らかです。たとえば下図は、日本における年齢別の女性正規雇用比率の推移を表したものです。
25〜29歳でピークに達した後、大きく低下し、そのまま戻らない。このカーブの形から「L字カーブ」と呼ばれており、日本独自の深刻な構造を示しています。
一方、就業率全体(M字カーブ)は40代以降で再上昇しますが、正社員に戻れない女性が多く、キャリア形成やリーダーシップポジションへの登用にはつながっていません。つまり、男性と同様に働くことすら難しい現状が横たわっています。

図1
引用:男女共同参画局女性の年齢階級別正規雇用比率(L字カーブ)(令和3(2021)年)
こうした社会課題に対して、経済産業省が行っているのが「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」です。採択された企業が医療機関や自治体等と連携し、実証事業を行いながら、その効果を可視化・共有していきます。
コメント
/
/
/
コメント