ゼロベースからの化粧品の品質管理【第58回】
―製造所の査察での指摘事項に対するGMP体制の整備―
化粧品の製造および品質管理において、GMP(Good Manufacturing Practice)の体系的な整備は、安全性と品質の一貫性を担保し、製品を市場に安定的に供給するための中核的な仕組みです。とりわけ、化粧品に適用されるGMPガイドラインであるISO 22716は、製造プロセス全体にわたる包括的な管理体制の構築を求めており、その適切な実装は品質リスクの低減と企業信頼性の向上に直結します。
前回は、製造現場で頻繁に指摘される「標準作業手順書(SOP)の遵守不足」や「ヒューマンエラーの多発」といった問題について、それらが発生する根本的要因と、それに対応するGMP体制の基本的な整備方法について解説しました。
今回はその続編として、GMPの運用が形式的にとどまり、実質的な品質保証につながっていない事例を取り上げ、現場で発生している品質事故の背景にある構造的課題について深掘りしながら考察を加えます。特に、以下のような比較的頻度の高い事故を取り上げ、それぞれの問題に対してISO 22716を根拠とした具体的な対応策を提示します。
前回は、製造現場で頻繁に指摘される「標準作業手順書(SOP)の遵守不足」や「ヒューマンエラーの多発」といった問題について、それらが発生する根本的要因と、それに対応するGMP体制の基本的な整備方法について解説しました。
今回はその続編として、GMPの運用が形式的にとどまり、実質的な品質保証につながっていない事例を取り上げ、現場で発生している品質事故の背景にある構造的課題について深掘りしながら考察を加えます。特に、以下のような比較的頻度の高い事故を取り上げ、それぞれの問題に対してISO 22716を根拠とした具体的な対応策を提示します。
●原料の誤投入 ●教育訓練記録の不備・形骸化
●容器・表示に関するミス(誤表示・ラベリングエラー)
●容器・表示に関するミス(誤表示・ラベリングエラー)
これらの問題に共通するのは、手順の存在自体よりも、その運用レベルに課題があるという点です。すなわち、標準書や記録様式が整備されていても、「教育訓練の未徹底」「記録の精度・信頼性の欠如」「手順と実態の乖離」といった運用上のギャップが、品質事故を誘発しているのが現実です。
また、ISO 22716では、「人員」「設備」「衛生管理」「製造管理」「品質管理」「文書管理」などの構成要素を相互に連関するシステムとして捉えることが求められており、それぞれの要素が有機的に機能して初めて、品質保証体制として実効性を持ちます。このため、GMP体制の構築・強化においては、以下の点を重点的に見直す必要があります。
また、ISO 22716では、「人員」「設備」「衛生管理」「製造管理」「品質管理」「文書管理」などの構成要素を相互に連関するシステムとして捉えることが求められており、それぞれの要素が有機的に機能して初めて、品質保証体制として実効性を持ちます。このため、GMP体制の構築・強化においては、以下の点を重点的に見直す必要があります。
① 教育訓練体系の見直しと、効果検証の仕組み化
② 記録管理の信頼性向上と、記録内容の定期的レビュー
③ 是正および予防措置(CAPA)の導入とフォローアップの徹底
④ 各部門の責任と権限の明確化、および運用状況のモニタリング
今回は、化粧品製造の現場で特に顕在化している3つの課題について、ISO 22716に準拠した改善アプローチを、プロセスの各段階と照らし合わせながら、実践的な視点で解説していきます。改善策は直接的な事項に絞られて話がされることが一般的ですが、表層的な対策ではなく、GMPの「意図」と「実効性」を正しく理解し、現場に即した運用改善をどのように進めるべきかを一緒に考えてみたいと思います。
1.原料の投入ミスに関する事例
(トラブルの状況)
2025年4月1日に500㎏のAスキンローションのバルクを製造し、3日後に4,000個の製品を生産し、出荷した。その後、お客様からのクレームで使用性が違うとの指摘を受けた。
調査を行ったところ、1,3-ブチレングリコールとプロピレングリコールを間違えて使用していたことが製造記録で確認された。尚、生産品の検査結果は次の通りであった。
(トラブルの状況)
2025年4月1日に500㎏のAスキンローションのバルクを製造し、3日後に4,000個の製品を生産し、出荷した。その後、お客様からのクレームで使用性が違うとの指摘を受けた。
調査を行ったところ、1,3-ブチレングリコールとプロピレングリコールを間違えて使用していたことが製造記録で確認された。尚、生産品の検査結果は次の通りであった。
●バルクの比重は、従来の値よりも高めであったが、規格内で合格であった。
●バルクの官能検査および出荷前の製品検査の官能検査では、異常は検出できなかった。
●原料の秤量時に原料名の確認が不十分で、使用した該当原料の荷姿の名称は指図書の原料と異なっていたものの気が付かなかった。
●原料の在庫量の差異が秤量後に発生していたが、月末の棚卸まで差異の確認がされなかった。
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