【解説】GMP適合性調査の実践的対応ガイド ~本質的な法令遵守を踏まえたGMP適合を目指して~【第4回】

調査の実際② ― 現場ツアーと書面調査に求められるもの

GMP適合性調査において、製造所の実態を最も直接的に確認するのが「現場ツアー」であり、その活動の証跡を深掘りしたり、実際に証拠として確認するのが「書面調査」です。これらは調査の中核であり、ここでの対応が調査全体の評価を大きく左右します。

1.現場ツアー:見られるのは「ハード」だけではない
現場ツアーでは、調査官は単に設備や施設の物理的な状態(ハード)を見ているだけではありません。そこで働く人々の動き、手順の遵守状況、そして衛生管理意識や状態などといった「ソフト」の側面も併せて観察しています。

  • 効率的なルート設定を:人や物の動線、清浄度区分を考慮し、更衣の回数が少なく、かつ工程の流れに沿った効率的な見学ルートを事前に計画・提案しましょう。非効率なルートは、調査官にフラストレーションを与えるだけでなく、製造所全体の管理能力への疑問にも繋がりかねません。
  • 「見られたくない」は禁物: 窓越しの確認などを提案する際は、「作業の安全確保のため」「汚染防止のため」といった合理的な理由を明確に伝えましょう。「見せたくないから」という印象を与えると、かえって疑念を招き、より詳細な立入確認に繋がるでしょう。
  • 現場での質疑応答は慎重に: 現場では、作業員に直接質問が及ぶこともあります。基本的には日頃からSOPの意義や目的を教育し、誰が質問されても基本的な事項は説明できるようにしておく必要があります。なお、即答が難しい質問や、担当外の質問については、「確認して書面調査の際に回答します」と伝え、担当者に正確な情報を引き継ぐことが重要です。

2.書面調査:適切な対話と証拠の提示
書面調査は、調査官との最も密な対話の場です。ここでは、記録という客観的な「証拠」に基づき、自社のGMPシステムが有効に機能していることを論理的に説明する能力が問われます。

  • 迅速な資料提示: 要求された文書や記録は、迅速かつ正確に提示できるように、事前に保管場所や検索方法を整理しておきましょう。資料提示の遅れは、管理体制の不備と見なされるだけでなく、何かを隠しているのではないかという疑念を生む原因となります。
  • 質問の意図を汲み取る: 調査官の質問には必ず意図があります。「なぜこの質問をするのか?」を考え、結論から先に、簡潔に回答することを心がけましょう。
    • オープンクエスチョン(例:「逸脱管理はどのように行っていますか?」): 全体像を簡潔に説明し、詳細な説明が必要かを確認します。冗長な説明は、論点を逸らそうとしていると受け取られかねません。
    • クローズドクエスチョン(例:「この手順書は承認されていますか?」): 「はい」か「いいえ」で明確に答えた上で、必要に応じて補足説明を加えます。
  • 曖昧・憶測での回答は厳禁: 不確かな回答はしないようにしましょう、最悪、虚偽報告と捉えられかねません。後から記録と矛盾することが発覚すれば、大きな問題点としてさらに深堀りがされるでしょう。必ずわからないところがあれば確認を行った上で正確に回答することを心がけてください。

現場ツアーと書面調査は、日頃からの準備と誠実な対話の姿勢が、調査官とのコミュニケーションを円滑にするでしょう。


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