【解説】GMP適合性調査の実践的対応ガイド ~本質的な法令遵守を踏まえたGMP適合を目指して~【第3回】

調査の実際① ― 事前準備からオープニングミーティングまで

GMP適合性調査の成否は、当日の対応だけでなく、それまでの準備にかかっていると言っても過言ではありません。ここでは、調査の通知を受けてから初日の冒頭までに準備等すべき点について解説します。

1.調査の種類と当局の役割分担を理解する
まず、受ける調査がどのような種類のものかを把握しましょう。

  • 申請に基づく調査: 新規承認や一部変更承認、5年ごとの定期更新に伴う調査。事前に通告があり、準備期間があります。
  • 立入検査(査察): 申請に基づかない調査。通常の定期的な査察(通告あり)のほか、違反の疑いや内部通報などを端緒とする特別調査(無通告の場合もある)も含まれます。

また、調査主体がPMDAなのか都道府県なのかによっても、その専門性や視点が異なります。PMDAは都道府県と違い生物学的製剤などの調査や海外製造所の調査も実施しており、なお、近年はPMDAとの合同調査も増えており、調査レベルの平準化が進んでいます。

2.事前提出資料:調査はここから始まっている
事前資料の提出を求められた場合、調査は既に始まっています。サイトマスターファイルや各種管理リスト(逸脱、変更、PQR等)、対象品目の製造・試験記録などを通じて、調査官は製造所の概要とリスクを把握し、当日の調査ポイントを絞り込んでいます。資料は正確かつ分かりやすく作成し、誠実な姿勢を示すことが重要です。

3.調査対応チームの編成と役割分担
調査は組織全体で受けるものです。例えば以下の役割を明確にした対応チームを編成しましょう。

  • 主説明者(フロント): QA部門の責任者などが中心となり、調査官とのメインの対話役を担います。
  • 専門説明者(SME): 各部門(製造、QC、技術など)の専門家。担当分野に関する詳細な質問に答えます。
  • 後方支援(バックヤード): 要求された文書や記録を迅速に準備・提供するチームを設置するとスムーズに調査対応が出来ると考えます。
  • 議事録担当: 調査官の発言や指摘、宿題事項などを正確に記録します。
  • 責任役員・製造管理者(キーパーソン): オープニングとクロージングには必ず同席し、経営層としてのコミットメントを示すことが極めて重要です。

4.オープニングミーティング:第一印象が調査の流れを決める
調査初日のオープニングミーティングは、調査全体の雰囲気を決定づける重要な場面です。

  • 責任役員の同席と挨拶: 経営層が調査を重視している姿勢を示すことは、調査官に安心感と信頼感を与えます。
  • 会社・製品概要の説明: 長々と説明する必要はありません。要点をまとめた資料を準備し、簡潔かつ分かりやすくプレゼンテーションしてください。時間は限られています。
  • 協力的な姿勢: 調査官を迎え入れ、協力的・友好的な態度で接することが、円滑なコミュニケーションの土台となります。


執筆者のGMPコンサルタント 田中が下記セミナーを担当します。
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