【解説】GMP適合性調査の実践的対応ガイド ~本質的な法令遵守を踏まえたGMP適合を目指して~【第2回】
GMP適合性調査の全体像 ― 法令の構造と当局の視点
GMP適合性調査に的確に対応するためには、まずその根拠となる法令の体系と、調査官がどのような視点で臨むのかを理解することが不可欠です。
1.法令の構造:法律・省令・通知・事例集などの関係性
GMPに関するルールは、単一の文書で完結しているわけではありません。以下の構造で成り立っており、これらを一体として理解する必要があります。なお、こちらは一部を抜粋して紹介しており、本来はもっと複雑な構造をしています。
- 法律(薬機法): すべての根幹です。第14条で、GMP省令への適合が医薬品の製造販売承認の要件であると定められています。
- 省令(GMP省令): 上記の法律第14条の第2項第4号のGMP基準の具体的な要求事項を定めたものであり、法的な拘束力を持ちます。
- 通知(施行通知など): 省令の解釈や運用方法を具体的に示す行政からの文書です。法的拘束力はありませんが、行政はこれを解釈の基準とするため、実質的な遵守が求められます。
- 事務連絡(GMP事例集など): 通知よりもさらに具体的なQ&Aや事例を示したものです。これも同様に、実務上の重要な指針となります。
調査官は、この構造を念頭に置いて調査に臨みます。例えば、「GMP事例集」に示された考え方から外れた運用をしている場合、「なぜその方法で品質が保証できるのか」という科学的・論理的な説明が必要となります。
2.GMP遵守の責任:製造販売業者と製造業者の両輪で
GMP遵守の責任は、医薬品を製造する製造業者だけにあるわけではありません。その製品の品質に最終的な責任を負う製造販売業者にも、委託先の製造所を適切に管理監督する責任があります。
近年の法改正ではこの点がより強化されており、製造所のGMP違反が原因で品質問題が発生した場合、製造販売業者も行政処分の対象となり得ることが明確化されています。調査においても、製造販売業者と製造所間の取り決めやコミュニケーションが適切に行われているかは、重要な確認ポイントとなります。
3.薬機法の目的:すべての規制の原点
GMPに関する全ての規制は、薬機法の基本理念である「医薬品の品質、有効性及び安全性の確保」そして「保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止」という目的を達成するために存在します。調査官も、この原点に立ち返り、例えば「この逸脱は患者の安全に影響を及ぼさないか」「この管理方法は製品の品質を恒常的に保証できるか」という視点で全ての事象を評価しています。この目的を共有することが、調査官との建設的な対話の第一歩となります。
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