CO2を食べる自販機、CO2資源循環の取り組み

1.背景
 2050年カーボンニュートラル(ネットゼロ)実現に向け、産業界全体でのCO₂排出削減が強く求められている。特に建築分野は、国内総排出量の約40%を占める主要な排出源であり、脱炭素化の推進が不可欠である。近年、住宅・建築物の使用段階におけるCO₂排出量を低減するためのZEB(Net Zero Energy Building)やZEH(Net Zero Energy House)などの省エネ技術が普及しつつある。しかし、今後は建設時や廃棄時に発生するCO2削減も重要視されており、2028年度には建築物のライフサイクル全体を評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)算定制度が義務化される予定である。これにより、建築物の設計・施工・運用・廃棄に至るまでの全工程でCO₂排出量の定量的評価と削減が求められることとなる。さらにSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた社会的要請が高まる中、企業には環境負荷低減への具体的な行動と、透明性の高い情報開示が強く求められている。2027年3月期からは、プライム市場上場企業に対してSSBJ(サステナビリティ開示基準)の義務化が開始される予定であり、CO₂排出量の可視化や削減努力は企業価値向上の重要な指標となっている。
 これらの背景を踏まえ、産業界全体での脱炭素化の取り組みは、単なる環境対策に留まらず、企業の持続的成長や社会的責任の遂行に直結する重要な経営課題となっている。

2. 食品工場や物流施設の脱炭素に関する最新の技術紹介
 食品工場では、再生可能エネルギーの導入や省エネルギー型設備(高効率ボイラー、ヒートポンプ、コージェネレーションシステム等)への更新、建屋屋根への太陽光発電パネル設置、LED照明への切り替え、更にIoTを活用したエネルギー管理システムの導入が進展している。
 物流分野では、EVトラックやFCV(燃料電池車)の導入による輸送時のCO₂排出量削減、モーダルシフト(鉄道・船舶への転換)や共同配送の推進による輸送効率の向上が図られている。共同配送とは、異なる製品を同一トラックに積載することで荷台容積の有効活用とドライバーの荷役作業負担軽減を実現し、輸配送に伴うCO₂排出量の大幅な削減に繋がる取り組みであり、異業種間の協業親和性が高い。
 冷蔵・冷凍倉庫では、自然冷媒(CO₂やアンモニア等)の採用や高断熱パネルの導入、太陽光発電による自家消費化が拡大している。これらの技術は冷却効率の向上と電力消費量の削減を両立し、環境負荷低減に大きく貢献している。また、配送と組み合わせることで、環境性と経済性を両立した持続可能な医薬品配送モデルの構築も進んでいる。

3.CO2を食べる自販機およびCO2資源循環概要
(1)CO2を食べる自販機概要
 当社では重要な販売チャネルである自動販売機を活用し、脱炭素社会の実現に向けた新たな価値創造に挑戦している。従来、自動販売機は省エネ技術(ゾーンクーリング、真空断熱材、ヒートポンプ等)の導入により、過去20年でCO₂排出量を約60%削減してきたが、近年は頭打ちとなり、更なる技術革新が求められていた。

 

 

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