医薬品のモノづくりの歩み【第3回】

「モノづくり」の基本要素とそのレベルを高めることの意味 

 医薬品製造における「モノづくり」の基本要素である品質(Quality)、生産性(原価Cost)、安定供給(Delivery)の意味をもう少し詳しくお話してから、それを高めることの意味を考えてみましょう。
 基本要素の品質(Quality)は、言うまでもなくGMPを遵守して正しく作業し、記録することを言いますが 、ここでは、製造に関わる方々の品質に対する意識レベル、品質システムや品質管理、そして業務品質も含めた品質として捉えます。生産性(原価 cost)は、「モノづくり」の基本要素として製造原価を指しますが、
ここでは、生産性向上の取組みとその成果について、製造原価をKPIにしてレベルを評価することとして捉えます。
そして、安定供給(Delivery)は、まさしく、決められた期日までに、決められた量の医薬品を安定供給するための設備の安定稼働や操業の安定化、生産管理や在庫管理レベルなどのことを表します。((第2回 図2)
 このQCDの具体的な取り組み方については、今後の連載を重ねる中で、順次解説していきます。

 さて、医薬品工場の「モノづくり」の基本要素のレベルを高めることが大切ですが、この記事を読まれている多くの方は、一つの要素を高めようとすると、他の要素のレベルが低下することはやむ負えないと思っておられるのではないでしょうか?
例えば、製造設備の老朽化が進んでおり、製造現場の立場では安定稼働のために、設備の更新を望みますが、一方で、製造原価を管理する立場では更新に伴い製造原価アップが懸念されます。また、製造原価低減のために、汎用原料をA社から価格の安い海外B社に切り替えることを計画しましたが、外観異物の増加による品質低下が懸念されるという話を耳にすることがあります。
確かに一面的には、前者は、設備更新による設備投資と減価償却費の増加により製造原価がアップし、コストレベルの低下は避けられないと思われます。また、後者は、原料の購入価格を下げることで、原価低減を図ることができますが、原料由来の異物が多い場合、選別での外観不良品の増加が心配されます。コストを下げる一方、品質レベル維持の対応が求められると言うことになります。
つまり「こちらを立てれば、あちらが立たず。」と言うことです。
果たして、本当にこの基本要素は、お互い相反する関係にあるのでしょうか? 
QCDの各々を管理する立場では、その要素のレベルアップを最優先に考えることは当たり前のことですが、それぞれの立場で、牽制し合っては、「モノづくり」に対する工場の信頼を得ることができません。

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